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事業戦略 商品のラインナップ

商品のラインナップ
 

主力商品と補助商品の関係

商品には客導線のためのフロントエンド商品と、本当に買ってもらいたいバックエンド商品があります。
ドラッカーは、前者を補助商品、後者を主力商品と位置づけています。
主力商品は売上げも利益も大きい商品です。
一方の補助商品は、その商品で利益を上げるというより、主力商品に販売の貢献する販売促進的な役割をもっています。
なお、アフターサービスなどは、補助サービスに属します。

たとえば、ジレットの安全カミソリの本体は、替え刃を売るための補助商品です。
また、スマホの本体は、使用料を確保するための補助商品ととらえることもできます。
なお、顧客の利便性を高めるアフターサービスは補助サービスに属します。
このような視点で、商品のラインナップを決めてください。
 

むやみに商品ラインを拡大してはいけない

事業が成功すると、その成功を活かしてもっと事業を成長させようとします。
しかし、市場の一点にスポットライトを当てるような戦略で成功してきた事業が、商品ラインを増やすことによって焦点がぼやけてくるとともに、業績が悪化することがよくあります。

たとえば、今、絶好調のワークマンを見てみましょう。
同社は、現場作業用の衣類専門チェーン店として業績を伸ばしてきました。
そのため、「ワークマン=丈夫でセンスが良い作業服の店」というイメージが定着しています。
その同社が今度は、「高機能×低価格のサプライズをすべての人へ」をコンセプトにしたワークマンプラスという店名で、アウトドア、スポーツ、レインウエアに進出しました。
つまり、これからは、「ワークマン=作業服、アウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店」となります。
しかも、これは現段階での商品ラインです。
今後は、ブランドと強みを活かしてさらに商品ラインを広げていくことでしょう。
そうなったとき、消費者は、「ワークマン=?」となります。
現在では、作業服ブランドでトップブランドと言えるでしょう。
しかし、アウトではスノーピックが、スポーツウエアではナイキが、レインウエアではザ・ノース・フェイスあたりがトップブランドでしょう。

このように、商品ラインを広げると、それぞれのトップブランドと競合するようになり、そのジャンルのトップブランドを追い越さないかぎり、特徴がない商品の集まりにすぎなくなっていくのです。
したがって、商品ラインの拡大は自制しなければなりません。
なお、商品ラインの拡大の誘惑には、次の5つがあります。
  1. 流通の視点・・・充実した流通チャネルをもっていると、そのチャネルを利用して、他の商品を売ろうと考えます。大手の食品製造業の商品のうち、本当に売れているのは20%もありません。
  2. 製造ラインの視点・・・製造ラインの稼働に余裕があると、他の商品をつくろうと考えます。工場の稼働率をあげれば、そのぶんだけ固定費をまかなえると考え、看板商品以外のものに手を出し、逆に赤字商品をつくってしまうことになります。
  3. 販売力の視点・・・優れた販売力で成功した会社は、どんな商品でも売れると思うようになります。ダイエットジムからありとあらゆる分野の事業に手を出して失敗したライザップが好例です。
  4. お客様のライフサイクルの視点・・・赤ちゃんを対象にした商品を提供している会社は、少子化による市場の縮小を脅威に感じています。そこで、赤ちゃんの成長にあわせて、ローティン向け、ハイティーン向けの商品にラインを広げていきたくなります。
  5. 地理的問題の視点・・・ある地域で成功すると、他の地域でも成功すると思い、点から線、線から面の地域拡大を目指します。そうして、面展開が限界になると、現在の面を細分化しようとします。その結果、いきなりステーキのように、自店舗間で客の奪いあいがはじまり、業績が悪化します。コンビニ業界も同じような状況になっています。
これらは、大きな会社のことにように思えますが、規模の大小は別にして、中小企業でも起こっています。 たとえば、飲食店で成功すると、経営能力を超えた多店舗化を進めて破綻するケースは、あなたのまわりにもあるのではないでしょうか?

なお、商品ラインを増やしたいときは、別のブランド名で展開することです。
「相乗効果がなくなる」「せっかくのブランド名が使えない」と考えないことです。
消費者のブランドに対するイメージがぼやけてしまうマイナスのほうが大きいからです。

価格設定の視点

誰が何と言おうと、良いものは高い、これが常識です。
良いもので安いものがあると、何か裏があるのではないかと勘ぐってしまいます。
これが消費者心理です。
あなたも、商品には自信がある。
しかし、高くすると売れなくなるのではないかと思い、他の商品より、少し高い価格を設定している状態ではありませんか。
あるいは、しぶしぶ、他社と同じ価格にしている状態ではありませんか?

あなたの会社の商品は、価格面だけから考えると、(1)安いから買う、(2)高いけど買う、(3)高いから買う、のどれになりますか。
もちろん、他社並みの価格であれば、この項は該当しません。

たとえば、10,000円と11,000円の商品では比較の対象になります。
しかし、100,000円の商品では比較の対象から外れます。
そもそも、対象顧客が違ってきます。
そして、他に100,000円の商品がなければ、競争が起きないため、その商品が、「自分にとって100,000円の価値があるか」「今、ほしいか」だけが判断基準になります。
一般商品ではありえませんが、ニッチな商品では十分ありえることです。

ある「かつお節メーカーさんには、10,000円の「ふりかけ」があります。年間数百万匹のかつおを加工していますが、10,000円のふりかけに使用するかつおは厳選した4,000匹程度です。
しかも、受注してから製造を開始しますので、発注まで2週間かかります。
この商品に関しては、顧客はスーパーマーケットの食品売り場に並んでいる数百円のふりかけと、比較することはありません。
顧客の関心は、「10,000円のふりかけが、自分や自分の大切な人に何をもたらしてくれるか」だけです。

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2020/10/22

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