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ニッチ先生の見聞思 孝蔵は我にあり

孝蔵は我にあり
 

行動責任は自分にあるが批判は他人の自由

行蔵(こうぞう)は我に存す。
毀誉(きよ)は他人の主張。
我に寄らず我に関せずと存候(ぞんじそうろう)
=勝海舟=
これは、福沢諭吉が
忠臣は二君に仕(つか)えず、という教えがある。
旧幕臣で徳川家に恩を受けながら、明治政府に仕える恥知らず。
と勝海舟を批判したことに対して応えた言葉です。

行蔵(こうぞう)とは、「世に出て道を行うことと、隠遁し世に出ないこと、つまり、出処進退のこと」
これは、論語のなかにある言葉です。
勝海舟は、福沢諭吉の勝海舟は恥知らずという批判に対して、何を行うかは自己責任だが、それを批判するのは他人の勝手。知ったことではないと突き放したのです。

そして、周りの人には、
上野で彰義隊が命がけで戦っているとき、品川の山から高みの見物をしていた男が福沢だ。
『日本のためだ』とか、『天は人の上に人は作らず』と御託を並べながら、目の前で人が死んでゆくのを高みの見物するような輩に天下国家を語ってほしくない。
と言ったそうです。
勝海舟は、討幕側の西郷隆盛との交渉で、江戸城の無血開城を実現し、徳川家を存続させた役人でもあり、政治家であり、血も涙も恩義も大切にした信念をもつ現実主義者でした。
なお、『竜馬がいく』(司馬遼太郎著)では、坂本竜馬に多大な影響を与えた人として描かれています。
実際に接点はあったようです。
 

信念と無頓着

勝海舟の「行蔵は、・・・」は、ある意味、批判に対して無頓着のように感じますが、決してそうではありません。
彼ほど他人の意見に耳を傾けた人もいません。
そのうえで、有益な意見と無益な意見を峻別していたのです。
彼の基本的な考えは「国家がどうあるべきか」でした。
そして、「その国家に対して、自分はどのような貢献できるか」でした。

この基本的な信念がなければ、保身を図る人たちばかりの堕落しきった旧幕府の責任者として、政権を円滑に明治政府に引き継ぐことはできませんでした。
あまり知られてはいませんが、明治政府は世界でも極めて稀な無血クーデターでした。
その立役者の一人が勝海舟だったのです。
だからこそ、福沢諭吉の評論家的な批判を無視したのでしょう。(慶応大学出身の人および関係者には、ゴメンナサイ!)
 

ニッチ先生にどのような貢献ができるか?

「行蔵は我に存す」という言葉を知ったのは、高校を卒業する春に読んだ『竜馬がいく』でした。
新しい事業コンセプトの構想を練っているときに、なぜだか、40年以上も前に知った、このフレーズが浮かんできました。
60代も半ばに差し掛かろうとしているときに、「何を言っているのだ!」と思うかもしれませんが、「今、人生の岐路に立っている」ような気がしています。

ドラッカーの著書のなかで、「創造的破壊」を唱えたシュムペーターが、人を育てないと、何もしたことにはならないと言ったと紹介されています。
ニッチ先生ができる社会貢献として、「経営者の成長支援」と「行蔵は我に存す」を、行動指針として考えている今日この頃です。

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2020/07/20

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