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事業戦略 顧客は誰か

顧客は誰か
 

顧客を特定する

顧客を特定しなければならない根拠を【ドラッカー理論】に置いていますので、該当する文章を引用します。
マーケティング分析における標準的な問いには、すべて答えなければならない。顧客は誰か、どこにいるか、いかに購入するか。
顧客は何を価値とするか、顧客のいかなる目的を満足させるか。顧客の生活と仕事において、いかなる役割を果たすか。顧客にとってその役割はどの程度重要か。例えば年齢や家族構成など、いかなる状況のもとでその役割はもっとも重要か。逆に顧客にとっていかなる状況のもとで最も重要でないか。
『創造する経営者』

理想的な顧客像を描く

マーケティング用語に「ペルソナ」というのがあります。
ペルソナとは、「事業や商品の典型的なターゲットにしたい理想的な顧客像」のことです。
ドラッカー的には、「顧客は誰か」になります。
どのような顧客像を描くかは、非常に重要な意思決定です。
それは、顧客像を描くことで、事業戦略の3要素の「誰に」が決まり、「誰に」が「何を」「どのように」の決定の基準になるからです。

ペルソナを設定するときには、自社の望む価格で買ってくれる顧客像を描いてください。
そのためには、顧客満足が欠かせません。
なお、満足は主観的なものですから、価値観が多様化しているわが国の市場では、すべての顧客を満足させることはできません。
したがって、ペルソナを設定するときには、できるだけ対象とする顧客のニーズを絞り込みます。
そして、絞り込んだ顧客に最高に満足してもらうビジネスモデル(仕組み)をつくるのです。
 

非競争の顧客ニーズを選ぶ

たとえば、コンクリートの原料の生コンは、時間がたつと固まってしまうという生鮮商品のため、片道90分以内が対象商圏になります。
効率だけを考えると、できるだけ近い工事現場に、できるだけ大容量の生コンを配送するのが良いビジネスモデルになります。

O社は、2019年の春に所属していた同業者組合を脱退したのを機に、ペルソナを設定しました。
それまでは、同業者組合が受注して、傘下の組合員に仕事を割り振っていました。
しかし、組合を抜けたため、自社で営業をしなければならなくなったのです。
そこで、「誰に=遠くで少量の生コンを必要とするお客様」に、「何を=便利さという価値」を提供することにしました。
そして、「どのように=少量でも、遠くても、時間外でも、狭い道路でも。ただし、それに見合った料金を頂いて対応する」ようにしました。

そのために、大型の生コン車だけでなく、中型・小型の車両も整えました。
それでも不足するときは、他社に配送を依頼するようにして、受注体制を整えました。
また、生コンの配送は、ジャスト・イン・タイムが要求されます。
そのため、交通渋滞に巻き込まれたときには、生コン車にGPSを付けていますので、生コン車から現場の責任者に電話を入れて、到着時間を知らせるようにしています。
連絡があると、生コンの到着時間まで別の仕事をして待つことができ、顧客の大切な時間を浪費させないですむからです。
さらに、住宅を建てる現場などは、進入路が狭いケースがあり、大きな生コン車は、現場まで入っていけません。
そのため、事前に営業担当者が現場を下見することを仕組み化しました。
これによって、使える生コン車がわかるため、現場に行って立往生するトラブルがなくなりました。

このような細かな対応によって、対象地域と受注先がひろがり、2020年の3月期には出荷量を前年対比の229.1%まで伸ばすことができました。
2020年度の上半期も、前年期の140%超で出荷量を増やしています。

O社は、社員数30数名の中小企業です。
そして、商品はJIS規格品で差別化が難しい業種です。
そのような経営環境のなかで、非競争の環境を創り出すために、どのようなペルソナを設定し、どのような提供方法をすべきかを教えてくれる好事例です。
 

なぜ、このような方法がうまくいくのか

O社は、同業者組合の加入していたときは、同業他社とまったく同じような経営をしていました。
戦略を意識したこともありませんでした。
その同社が、短期間で驚くほどの業績アップを実現しました。
その理由をドラッカーの言葉で説明します。
=前略=これらの事例は、あまりに当たり前のことと考えられるかもしれない。これらの戦略は、賢明だから機能したのではない。たしかに、少しばかり頭を使えば、誰でもこのような戦略に到達できるであろう。
しかし、理論経済学の父デビッド・リカードはかつて、「利潤は賢さの違いから生まれるのではない。愚かしさの違いから生まれる」と言った。
これらの戦略は、懸命だから機能したのではない。じつのところ、企業といわず公的サービスといわず、他の誰もが、何も考えないから機能したのである。
(イノベーションと企業家精神)
もうひとつの事例ですが、民泊事業を創造したエアビーアンドビーの創業者が、事業を起こすにあたって資金調達が必要になりました。
しかし、金融機関や投資家に話すとアイデアが盗まれるのではないかと心配になり、ある人に相談しました。
すると、心配するな。こんなバカなことをする人はいないと言われたそうです。
つまり、業界の常識から離れ、市場志向、お客様志向になれば、どこにでも非競争のビジネスネタは転がっているということです。

ちなみに、エアビーアンドビーの民泊事業は、宿泊業に属します。
その宿泊業は差別化がむずかしく、過当競争の市場です。
そのなかで、同社は当分の間、競合が現れず、絶対的な地位(ポジション)を築くことっができました。
これも上記で引用したドラッカーの言葉で説明できます。
新規事業で成功した企業の共通点は、一点に絞り込んだお客様ニーズに、これまでにない方法で応えたことです。

粗利益率アップに関心がある方はこちらもどうぞ!
 
2020/10/16

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