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ドラッカーの生態的ニッチ戦略 015 「ニッチ」の正しい意味を知る

ドラッカーの生態的ニッチ戦略 015 「ニッチ」の正しい意味を知る

ドラッカーの言葉

ドラッカーは、中小企業に対して生態的ニッチ戦略の有効性を説いています。
また、下記のような記述もあります。
リーダー的な地位とは、規模の問題ではなく、質の問題である。強みとする分野への集中である。
― 中略 ―
スペシャリストになることができるニッチは、ほとんどあらゆる分野に存在する。
(エッセンシャル版 マネジメント)

業界によってニッチの意味は違う

私たちは、ビジネス用語として、「ニッチ=すき間」と認識しています。
ところが、ネット検索してみると、同じ「ニッチ」でも、分野によって意味が微妙に違ってます。
たとえば、
  • 建築用語では「壁のくぼみ」
  • 土木用語では「トンネルなどのわきに設けられる非常用の退避空間」
  • 生物学用語では「ある生物が生存競争などを経た結果、適応した特有の生息場所(適所)」
を意味します。

ビジネス用語としてのニッチ(=すき間)は、建設用語、土木用語とほぼ同じ意味ですが、生物学では意味が違っています。


ドラッカーは、著書『イノベーションと企業家精神』の「第3部 企業家戦略」で、ニッチ戦略を紹介しています。
翻訳本では「ニッチ戦略」となっているのですが、原著ではecological niche(エコロジカル・ニッチ)となっており、正確には【生態学的地位】という意味です。

動物に学ぶ生態的ニッチ戦略

少し長くなりますが、ウィキペディアの「ニッチ」を引用します。
この説明で、ドラッカーが意図したニッチが理解しやすくなります。
ニッチ(niche)は、生物学では生態的地位を意味する。1つの種が利用する、あるまとまった範囲の環境要因のこと。
地球上のさまざまな場所に生物が生息できる環境(藤屋注:棲み分ける場所=適所)があり、そこに生息する種はそれぞれ異なっている。
=中略=
ただし、一つの地域に存在する草食動物は一般的に一種だけではない。複数の草食動物は、実際には食べる植物の種類(草か灌木かなど)、草の食べ方(葉先を食うか根元を食うかなど)、採食の時間(昼間食うか夜食うかなど)といった違いがある。
つまり、大まかな見方では同じニッチに見えても、その中にはさらに細かいニッチがある。
ドラッカーの生態的ニッチ戦略は、動物の強い相手と棲み分ける、あるいは、食べる種類・食べ方・採食の時間などを変えて食い分けることで、生存できる状況をつくり出しているのを、ビジネスに応用しようとするものです。

どのような市場でも、分類や分解を繰り返していけば、さらに細かい市場に分けることができます。
固定費が高く、大きな市場でなければ存続できない大企業であれば、大きな市場を対象にしなければなりません。

しかし、中小企業は、競合がなくなるまで市場を細分化して、そのなかの1つの市場を対象にしても十分に存続できます。
つまり、同じ業界・同じ市場にいても、他社と競合しない状況(生態的ニッチ)をつくり出せば、目標利益が確保できる事業になります。

良い会社の条件に、会社の大きさ(規模)は入っていません。
競合がない状況を創り出し、顧客をファン化・信者化できる関係を築けているかどうかです。
中小企業の業績は生態的ニッチを確保できているかどうかで業績が決まります。


なお、生態的ニッチでは、会社の規模は絶対的なものではなく相対的なものです。
たとえば、イタリアの高級スポーツカーのフェラーリは、2018年の売上高は4,260億円、純利益は980億円(純利益率23%)、従業員3,000人を超える大企業かつ超優良会社です。
しかし、年間の生産台数は9,000台を上限にしています。
世界の自動車の生産台数は9,000万台ですから、市場シェアは0.01%にすぎない超ニッチ会社です。

同社は、売れるだけ売るのではなく、販売台数を限定して、フェラーリ信者ともいえる顧客だけを相手にして、我が道を行く経営を貫いています。
これこそ、中小企業のお手本になる経営だと思いませんか?

=続く=

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2020/01/30

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