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多角化戦略 想定外への対応
ドラッカーがイノベーションのチャンスとして、最初に持ってきているのが、この「想定外のもの」です。
想定外のことに対応することによって、多角化が可能になってきます。
想定外のものには、
- 想定外の成功
- 想定外の失敗
- 想定外の出来事
いずれもイノベーションのチャンスとして即効性があるのですが、なかでも想定外の成功ほど有効なチャンスはありません。
それは、気づいていなかったチャンスを、ご親切にも市場や顧客が「これが売れる!」と教えているからです。
チャンスとわかれば、想定外に売れた理由を分析して、ひと工夫すれば、再現性のある(繰り返すことができる)事業や商品・サービスを開発することができるようになります。
多角化を図るには、もっとも手っ取り早い方法です。
想定外の失敗もイノベーションのチャンスです。
ドラッカーが高校を出てすぐに就職した金物雑貨の貿易会社は、想定外の失敗を生かせずに倒産してしまいました。
その失敗を生かした小さなライバル企業が業績を伸ばしました。
想定外の成功も失敗も、自社だけでなく他社のものの原因を分析することで活用することができます。
無視するには、あまりにももったいないイノベーションのチャンスです。
世の中には、説明ができない不可解な出来事がときどき起こります。
それは経済活動においても例外ではありません。
その不可解な現象もイノベーションのチャンスとしてとらえることです。
事例では、1950年代のアメリカでテレビが急速に普及し始めました。
それに伴い、誰もが書籍の販売が落ちると予測しました。
しかし、その予想に反して、書籍の売上げは大幅な伸びを示したのです。
その理由は現在でもわかっていません。
しかし、理由はわからなくとも、書籍の売上げが伸びているという事象をビジネス・チャンスとしてとらえ、新たに販売を開始した量販店などは売上げを大幅に伸ばしました。
つまり、想定外の出来事をイノベーションのチャンスにしたのです。
想定外への対応事例
想定外への取り組みを、「11の切り口」として考えました。
偶然とも思える成功や失敗、出来事を活かして、市場や顧客、商品やサービス、流通チャネルや営業方法を変えるだけで業績を伸ばすことができます。
人生は思った通りに行かないものですが、ビジネスも思った通りにいくほうが少ないものです。
想定外を当たり前のこととして受け入れ、チャンスに転換しましょう。
多角化のヒント1 見せ方を変えた
バラ用の園芸資材を「プロ用」として販売すると、まったく売れませんでした。そこで、その想定外の失敗を踏まえ、「趣味用」として販売すると業績が伸びました。
バラを趣味でつくる人は、自分たちをプロとは考えていなかったのです。
多角化のヒント2 営業方法を変えた
自社の強みが分からないまま業績低迷が続いていた金型試作品メーカーで、納期の短さが強みであることを知りました。これは想定外のことでした。
そのことに気づいた同社では、同業他社の納期が5日ほどかかっていることから、「3DAYの短納期」をセールスポイントとして打ち出しました。
そうすると、料金の値引き要請もない売上げが増え、業績が急激に伸びてきました。
多角化のヒント3 価格を変えた
今でこそ千店舗を超えるサイゼリアも、1号店は立地が悪く倒産寸前になってしまいました。
そこで値引きをはじめたのですが、半額にまで下げると行列ができるような繁盛店になりました。
これは想定外の成功でした。
その半額の価格で儲かる仕組みを作って今日のサイゼリアになったのです。
多角化のヒント4 収益源を変えた
OA機器を販売する福島県の某社は、機器の販売では経営が安定しないことに悩んでいました。
しかし、OA機器を販売したあとのアフターサービスにしていた保守管理は、値引き要請も競合に邪魔されることもない安定的な収入であることに気づきました。
これまでの受注活動で想定外の成功ができ上がっていたのです。
そこで同社は、OA機器を「保守料を獲得するためのサービス商品」として位置づけ、低い利益率でも受注することにしました。
そうすることで納品したOA機器から、長期安定的な売上げを獲得できるようになったのです。
多角化のヒント5 市場を変えた
わが国でも、1950年代の後半からテレビが普及するようになりました。
しかし、高額であったため、どの家電メーカーでも都市部で売ることにしたのです。
ところが、所得が低くてとてもテレビを買えそうにない農村部でテレビが売れていたのです。
想定外の事象に気づいた松下電器(現パナソニック)は、農村部に集中的に販売しました。
それで、テレビの市場シェアでトップに立つことができました。
当時のわが国の第1次産業の従事者が30%を超えた大きな市場だったのです。
多角化のヒント6 商品の意味を変えた
トランプは家族や仲間で遊ぶときは娯楽用品ですが、カジノで使えばギャンブルの道具になります。
また、手品で使えばサービス業の道具になります。
あるいは、同じ成分の薬でも二日酔いの薬にもなれば、美白用の薬にもなります。
さらに、健康食品のニンニク・コンニャクは、もともと食材でした。
商品の意味を変えることで、同じものが新商品になり、新市場の開拓も可能にするのです。
多角化のヒント7 用途を変えた
ハローキティで有名なサンリオは、ハローキティのキャラクターグッズをアメリカでも販売しようと直営店を30店舗まで拡大しました。
しかし、事業として発展しません。
そのとき、ハローキティのライセンスを使用したいと申し出がありました。
それは想定外のことでした。
しかし、それに乗りました。
アメリカで展開していた直営店をすべて閉鎖し、世界のさまざま製造業や流通業にハローキティの使用権を与える海外事業戦略(現在800社以上)に切り替えたのです。
そのおかげで長期低迷していた海外事業の業績は急激に回復し、全社的な利益は5年間で3倍の180億円超になりました。
多角化のヒント8 素材を変えた
広島県でケーキショップを展開していた八天堂は、特徴を打ち出せないままに10店舗まで広げて経営危機に陥りました。
そこで、クリームパンを創り出したのですが、ケーキに使う生クリームをクリームパンに使うことにしました。
これが想定外にヒットしました。
そこで同社は、7年という期間をかけてケーキショップから撤退し、クリームパン専門店に転換しました。
しかも、普通のパン屋ではなく、コンセプトを「スイーツパン」として通常のクリームパンの2倍の価格で販売したのです。
今では東京から福岡まで好立地に20店舗を超えるブランド店に成長しています。
多角化のヒント9 商品を変えた
ホンダはオートバイでアメリカ進出を図ったとき、日本人より体が大きなアメリカ人が乗るバイクとして、大型車を販売することにしました。
しかし、思うように売れませんでした。当時のアメリカでは、バイクは黒い革ジャンを着た「ならず者」が乗るものだったのです。
それでもホンダの社員は、町中を駆けずり回って拡販努力をしていました。
そのとき、彼らはアメリカでは売れるはずがない小回りが利く50㏄の「カブ」に乗って営業していました。
その50㏄のバイクを見たアメリカ人たちは「キュート!」(かわいい)と言って、カブを求めたのです。それは想定外のことでした。
そこで、ホンダは、販売の優先順位を変え、カブを大々的に売ることにしました。
そのカブがバイクの悪いイメージを払しょくしたため、大型車も売れるようになりました。
「売りたいもの」ではなく、「顧客が買いたいを売る」というマーケティングのお手本みたいな事例ですね。
多角化のヒント10 工程を変えた
お客様に製造現場をモニターで見せることは、少し気の利いた店舗や飲食業ではやっています。
しかし、その逆の、製造現場の人たちに売り場をモニターカメラで見せるところは皆無と言っていいでしょう。
また、現場で顧客から商品をほめられても、その商品を作った従業員をわざわざ連れてきて紹介する店舗や企業も少ないでしょう。
ところが、こうしたことをやって、従業員のモチベーションがあがり、日本で有数の売り場効率を実現しているのが仙台市のスーパーマーケット「さいち」です。
惣菜売上げが全売上げの50%と群を抜いています。
「おはぎ」に至ってはこの店舗だけで1日に5千個、休日には1万個も売れるそうです。
駅ビルなどに出店している売上げを含めると2万個を超える日もあるそうです。
ヒット商品を出すことで多店舗化も可能になってきます。
従業員に顧客の様子を伝えたくて、また、がんばっている従業員を顧客に紹介したくて始めたことが、思わぬ従業員のモチベーションにつながり、同社の好業績に結びついています。
多角化のヒント11 販路を変えた
少子化は、菓子業界にとって脅威です。
そこでグリコは成人女性の市場開拓に乗り出しました。
それがオフィスグリコです。300年前からあった置き薬を菓子の販路に活用(創造的模倣)したのです。
この新しい販路は同社の業績に貢献しています。
ところが、オフィスグリコには想定外の成功がありました。
それは男性客の開拓でした。
オフィスで仕事をする人は、頭を使った仕事をしている人たちです。
知識労働でも夕方になれば疲れてきます。
そうすると甘いものが欲しくなってきます。
だからと言って、わざわざ出掛けて行ってまでして菓子を買おうとはしません。
しかし、オフィス内にあると話は別です。なんと、オフィスグリコの顧客の70%は男性なのです。
このようにしてオフィスグリコは新しい販路として定着していったのです。
今回のような思考法は、下記のビジネス教材で習得できます
\ 経営の基本をマスターする教材 /- 内 容:深く広く考えるために経営知識を体系的に習得する
- 対象者:経営基盤を強化したい中小企業の経営者
- 費 用:4,980円(税別)と5,980円(税別)
- 提供方法:ステップメルマガ形式で月4回、1回20分前後の映像と文章を配信
2019/09/20 |