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ドラッカーの生態的ニッチ戦略 000 はじめに
ドラッカーの生態的ニッチ戦略とは
小さな会社が勝ち残る方法として、生態的ニッチ戦略があります。これは、ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』で紹介されている小さな会社のための事業戦略です。
この戦略は、生態的ニッチ市場を見つけて、自社の強みでマネ防止策(参入障壁)を講じた高収益事業を創り出そうというものです。
顧客が事業であり、強みが事業である
さて、競争戦略の大家と言われているマイケル・ポーターが「儲かる業界や市場で、儲かる位置にいれば儲かる」(ポジショニング)と言いました。実に単純・明解な当たり前のことでした。
これに対して、同じく企業戦略論の大家であるジェイ・バーニーは「同じ業種や市場にいても、会社の強みが違えば儲かる」(ケイパビリティ:能力、強み)と反論しました。
この論争に対して、ある経営学者がどちらの主張が正しいかを検証する調査をした結果、儲かっている企業の15%がポジショニングによるもの、45%が強みによるものだと判明しました。残りの40%の儲かっている理由は分類できなかったそうです。
いかにも学者らしい論争です。
これに対してドラッカーは、「顧客が事業であり、強みが事業である」と言いました。
顧客が事業であるとは、儲かる業界や市場で、儲かる位置で、儲かる顧客を相手にすることです。
そうすれば儲かります。
また、強みが事業であるとは、他社より秀でた能力を持たなければ顧客が満足する商品を創り出す(製造や仕入れ)ことができません。
だから、強みが事業になります。
2人の戦略の大家は、「ポジショニング」か「強み」のどちらが業績に影響するかで考えたのですが、ドラッカーは「両方」で考えました。
両方で考えることで、「儲かる業界や市場で儲かる位置にいて、他社と違う強みを持てば儲かる」と言ったのです。
ポジショニングを「生態的ニッチ」(エコロジカル・ニッチ、儲かる業界や市場)と考え、ケイパビリティを「自社の強み」(他社と違う強みを持って特徴を打ち出す)に置き換えると、ドラッカーの生態的ニッチ戦略になります。
これがこのシリーズのテーマです。
ドラッカーは、『イノベーションと企業家精神』のなかで、このシリーズのテーマである生態的ニッチ戦略を次のように説明しています。
差別化戦略に成功すれば、大企業となり、普通名詞とまではいかなくとも目立つ存在となる。これに対し、ニッチ戦略に成功しても名をあげることはなく実をとるだけである。それらの企業は目立つことなく優雅に暮らす。この戦略のポイントは、製品としては決定的に重要でありながらほとんど目立たず誰も競争しにこない点にある。
ニッチロード
弊社が主宰する経営塾の塾生さんが、ある懇親会のあいさつで、かつて、ジョンデンバーが歌って有名になった『カントリーロード』、昨年、ラグビーワールドカップ用の替え歌『ビクトリーロード』で記憶も新しい曲に、『ニッチロード』という歌詞をつけてくれました。その歌詞は、「この道 信じていけば 必ず儲かる日が来るのさ 生態的ニッチロード」です。これこそ、私があなたにお伝えしたいことです。
シリーズの参考文献
なお、このシリーズは、ドラッカーの生態的ニッチ戦略をそのまま解釈したのではなく、『現代の経営』『創造する経営者』『イノベーションと企業家精神』『乱気流時代の経営』などをベースに、より実践的にするために、他の研究者の理論や筆者の経営コンサルタントとしての経験を織り込んでいます。また、「ドラッカーが述べた」と表現していますが、正確には、「ドラッカーがこのような趣旨のことを述べた」ととらえてください。
このシリーズが、あなたの会社の独自化や差別化の一助になれることを願っています。
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