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既存商品を売れる商品に変える方法
セブンイレブンになれなかったファミマ
先日の日経MJ新聞に、『筆頭株主の伊藤忠商事がファミリーマートを完全子会社にする』という記事が出ていました。2002年、伊藤忠商事から送り込まれた社長が、首位のセブンイレブンを追い抜くために規模拡大を図りました。しかし、社長在籍期間中の15年間頑張っても夢は叶いませんでした。
合併に次ぐ合併で、店舗数はローソンを抜いて2位になりました。
しかし、2019年度の1日1店舗当たりの平均売上高は、セブンの656,000円に対して、528,000円、ローソンの535,000円にも及びませんでした。
セブンイレブンの後姿は遠のくばかりです。
同質競争でセブンを抜こうとしたのが間違い
リーダー企業がトップの座に胡坐(あぐら)をかいたり、トラブルに見舞われたりしないかぎり、下位企業が同質競争で、断然トップのリーダー企業を追い抜くことはできません。通常、下位企業は、「より良い商品をお買い得の価格で!」と考えます。
しかし、「より良い」と考えた時点でアウトです。
「より良い」とは、既存市場、既存商品分野のなかでの比較です。
消費者の頭のなかに刷り込まれているのは、次のようなリーダー企業のイメージです。
- 業界トップになっているのは、一番売れているから
- 一番売れているのは、品質が良いから
情報過多で、何が正しい情報か分からない現在では、もっとも妥当な考え方です。
そして、一度、刷り込まれたイメージを、同じ分野でくつがえすのは至難の業です。
なぜならば、人は、自分が知らないことは素直に聞きますが、知っていることを否定されると拒否反応を示すからです。
ファミマの基本的な失敗は、消費者に対して、「コンビニ市場で、ファミマがセブンイレブンより優れているという意識改革を求めた」ことです。
つまり、ダントツの業界トップ企業であるセブンイレブンに対して、同質競争で抜こうとしたのが間違いだったのです。
下位企業が業績をあげるためには、リーダー企業が参入できない市場、追随できない商品をつくることしか方法はありません。
では、ファミマは、どうすればよかったのでしょうか?
強い商品の強みのなかにある弱みを見つける
ひとつの例として、北海道でコンビニを展開する【セイコーマート】があります。詳細は別の機会に譲るとして、北海道ではセブンイレブンもマネできない仕組みをつくりあげています。
北海道は広大な面積のわりに、札幌市や旭川市・函館市など一部の都市を除いて、多くの過疎地域を有しています。
その過疎地でも利益が出せる仕組みが、セイコーマートの強みです。
セブンイレブンも本気で取り組めば、マネできないことがないかもしれません。
しかし、そのような地域にエネルギーを使うより、同じエネルギーを使うならば業界トップの強みを活かして、もっと魅力的な地域で事業展開を考えるでしょう。
つまり、「業界トップや大手がマネしたくない状況」を創り出したのです。
もうひとつの事例は、【アサヒモーニングショット】です。
アサヒ飲料は、缶コーヒートップの『いつ飲んでもおいしい ジョージア』(コカ・コーラ社)に対して、『朝専用の缶コーヒー アサヒモーニングショット』を発売しました。
「いつ飲んでもおいしい缶コーヒー」と言っているのですから、「朝だけおいしい」という缶コーヒーを出すと、既存のコンセプトに矛盾します。
つまり、圧倒的な強さを持つトップ企業が、「マネしたくても、マネするわけにはいかない市場」を開拓したのです。
『アサヒモーニングショット』は、朝専用の缶コーヒーという市場を開拓して、業績を伸ばしました。
ちなみに、午前中に缶コーヒーを飲む人の割合は、40%を超えていたそうです。
朝専用の缶コーヒーというニッチとも思える市場ですが、実は40%を超える市場でした。
しかし、市場全体(100%)を対象にしているトップブランドの企業は、どんなに「おいしそうな市場」に見えても、残りの60%の市場を無視することはできません。
これらが、追随する企業や商品やサービスがとるべき戦略です。
リポジショニング 対象市場・特徴を変える戦略
「粗利益率がとれない」「売上げが伸びない」のは、ポジショニング(他社との違い、特徴)ができていないからです。特徴がないから売れないし、売れても粗利益率が低いと考えましょう。
特徴を打ち出すためには、「どのような顧客層にとって魅力的なのか」を明らかにする必要があります。
既存の商品でも、貴社が持つ商品やサービスの魅力や特徴を、視点を変えて明らかにすれば、売れるようになります。
たとえば、アメリカの宅配業者でエミリー社というのがあります。
アメリカの宅配業でのダントツは、フェデラルエクスプレス社(通称フェデックス)です。
これに対して、鳴かず飛ばずだったエミリー社は、「70ポンド(約32㎏)以上の重い荷物専門」という自社のポジションの再設定(リポジショニング)を行い、業績を飛躍的に伸ばしました。
それは、【専門】という、リーダー企業にはマネできない「消費者の心に響くキーワード」が使えるようになったからです。
もちろん、全方位でダントツのフェデックスが、「重い荷物専門市場」に追随することはありませんでした。
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2020/07/14