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ドラッカーと藤屋伸二



事業戦略 セミナー
ドラッカーと私 はじまりは『現代の経営』

1996年に経営コンサルタントとして起業し、1998年に経営を勉強し直すために、大学院に入りました。

すでに中小企業診断士と社会保険労務士の資格を取得していました。
しかし、コンサルティング先の企業規模が大きくなるにつれ、そのレベルの知識では、限界を感じはじめていたからです。

入学してすぐに指導教授から、「2年しかないから、修士論文のテーマは早く決めておきなさい」と言われました。

当初のテーマを破棄し、新しいテーマを探しだして、半年ほどたった秋のある日、書店で、ほんとうに偶然に、ドラッカーの『現代の経営 上』を手に取り、目次を見、「まえがき」を読みました。

そのなかに、「ある大銀行の会長は役員に対して、『マネジメントについて一冊だけ読むとしたら【現代の経営】にしなさい』と繰り返しいってくれている」と書いていました。

「そうか! この本を一冊読むと、経営がわかるようになるんだ!」と単純に思いました。
それがドラッカーに取り組み出したきっかけです。

今、考えると、なんと短絡的な発想だったのでしょう:苦笑
しかし、その直感は当たっていました。
今も、経営コンサルタントとして仕事ができているのは、ドラッカーに取り組んだからだと思っています。

まず、『現代の経営』を数回読みました。
気になる文章を黄色のマーカーでなぞり、赤と青のボールペンで傍線を引き、書き込みをしました。

研究会で知り合った他大学の教授から、
「1冊をA4用紙10ページくらいにまとめてみなさい。次に図解しなさい。そうすると自分のものになる」と教えて頂きました。

さっそく、その通りにしました。
そうすると、ただ精読するだけよりも、はるかに深く理解できるようになりました。


次に、ドラッカーの三部作と言われている『創造する経営者』『経営者の条件』を同じように読み込み、まとめ、図解していきました。
そのうえで、また『現代の経営』に戻りました。

このようなことを数回繰り返して、「ドラッカー経営は、だいたいこのようなものだ」と理解することができました。

その後、他のドラッカー本に取り組んでいきました。
ドラッカーのマネジメント関連の核となる3冊に取り組んでいたので、他の本は、比較的スムーズに理解することができました。


当初の読書の中心は、『現代の経営』でした。
それは、コンサルティングの対象が、人事制度・評価制度が中心だったからです。

その後、コンサルティングの対象が、事業戦略に移行してきたため、読む本も『創造する経営者』と『イノベーションと企業家精神』が中心になっていきました。

『創造する経営者』で戦略を学び、『イノベーションと企業家精神』でマーケティングとイノベーションを学びました。
この2冊の本も、『現代の経営 』と同じように、30回ずつくらい読み込んでいると思います。

その後、経営コンサルタントとして専門性を打ち出すために取り組んだのが、ドラッカーの「生態的ニッチ戦略」です。

これは、『イノベーションと企業家精神』の「企業家戦略」に出てくる戦略です。
生態的ニッチ戦略の説明に、

「生態学的地位を確保しようとする戦略は、小さい領域において、実質的な独占を実現することを狙いとする」とあります。

そして、

「競争的戦略に成功したものは、大企業として、目立つ存在になる。生態学戦略に成功したものは、名より実をとることになる。
それらの企業は、名もないなかで贅沢に暮らす。事実、生態学戦略に成功した企業は、決定的に重要な製品を手がけておきながら、ほとんど目立たない。そのため誰もこれに挑戦しようとさえしない」

と続きます。

この文章を読んで、中小企業の事業戦略は、生態的ニッチ戦略が最適だと確信し、それに集中的に取り組むことにしたのです。

さらに、中小企業の多角化(新規事業創出)というテーマにも取り組むようになりました。
ドラッカーの『創造する経営者』の一節に、次のような文章があります。

「専門化と多角化に関連がなければ、生産的とはなりえない。専門化だけでは、個人営業の自由業に他が生えただけのことである。通常、そのような事業は成長できず、一人の人間が死ねば消滅する。しかし逆に、専門化せず、いかなる卓越性もなく、単に多角化しているだけでは、マネジメントはできなくなり、ついにはまったくマネジメントできなくなる」

この文章を受けて、多角化の重要性を再認識しました。

つまり、ドラッカーのいう「選択と集中」は、自社の強みを活かせる「共通の市場」か「共通の技術」を選択し、そこに集中的に取り組みなさいということです。

したがって、決して、「単一事業に引き籠りなさい」ということではありません。
このことをコンサルティングの顧客や、主宰する経営塾の塾生さんに伝えると、間違った解釈の「選択と集中」から解き放たれて、生き生きとしてきます。


なお、今は、ドラッカーの書籍でいえば、『マネジメント』に取り組んでいます。
『エッセンシャル版』ではなく、ダイヤモンド社が発行している上下巻の合計が1,400ページを超えるぶ厚い白い表紙の本です。

私の解釈では、「マネジメント」は「管理」ではなく「経営」です。
したがって、私のなかでは、ドラッカーの著書『マネジメント』を、経営のバイブルと位置づけています。

また、『マネジメント』を、すべて「生態的ニッチ戦略」の観点からとらえ直し、他の研究者の経営理論、たとえば、ブルーオーシャン戦略、カテゴリーキラー、カテゴライズ論、ブランド戦略などの要素を部分的に取り入れています。

なお、生態的ニッチも、生物学としてのニッチ(適所:安心・安全に生活できる空間・場所である「巣」のようなところ)という観点から、

「適所とは、生存可能な環境であることを前提に、『棲み分け』と『食い分け』が可能な場所・空間(市場)」

と定義しています。

したがって、ドラッカーの生態的ニッチ戦略をベースにしているとはいえ、ドラッカーの生態的ニッチ戦略そのものではなくなったため、【藤屋式ニッチ戦略】と呼ぶことにしました。

=続く=

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2019/09/30

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