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生態的ニッチ戦略とは


生態的ニッチ戦略とは

ドラッカーの生態的ニッチ戦略

ドラッカーの著書から生態的ニッチ戦略に関する文章を引用して、「生態的ニッチ戦略とは何か」と「その有効性」を導き出していきます。

会社に成長は必須条件か?!

会社は、成長を続けなければなりません。
ただし、成長とは、必ずしも規模的に大きくなることだけではありません。
基本的に生態的ニッチ市場は成長しない。
生態的ニッチ市場に対応する会社は、規模的成長は必ずしも必要ないが、質的成長は必須条件である。
(抄訳 マネジメント)
 

企業は大きいことが良いとは限らない

「大きいことはいいことだ!」と言われたのは、高度成長期の話です。
しかし、いまだに経営者の多くは、規模拡大の呪縛から解き放されていません。
これからはあらゆる組織にとって、いかなる規模が適切であるかが課題となる。
機械的なシステムでは、大規模化により一段と大きな成果をあげることができた。
より大きな力が、より大きな産出を意味した。

だがそれは、これからの生物的なシステムには通用しない。
生物的なシステムでは、規模は機能により決まる。
ゴキブリにとって、大きいことは反生産的である。
ゾウにとって、小さいことは反生産的である。

生物学者は、ネズミはネズミとして成功するために必要なことをすべてしているという。
ネズミが人間よりも頭がよいかどうかは愚問である。
ネズミはネズミとして成功するうえで必要なことについて、他のあらゆる動物の先を行なっている。

= 中略 =

今後、対象市場のニーズに応える事業規模が課題となる。
その仕事が最もできるのは、ミツバチか、ハチドリか、ネズミか、シカか、ゾウか。
いずれの大きさも必要である。

それぞれの市場にふさわしい事業規模がある。
企業にとって最適な規模とは、選択した生態的ニッチ市場にふさわしい規模である。
(テクノロジストの条件)
 

中小企業の優位性

すべてのものには適性があります。
すべての面で優れているということはあり得ません。
中小企業は小さいだけでなく単純である。
したがってその反応は早く機敏である。
資源を重点的に投入することもできる。
(抄訳 マネジメント)
 

市場シェア至上主義のデメリット

大企業は、市場シェアの拡大を良しとしています。
しかし、市場シェアの拡大が効果を発揮するのは、ネットワーク効果があるビジネスだけです。
それ以外の多くの市場・産業では、市場シェアの拡大は利益よりもコスト増をまねきます。
市場シェアの優位は、利益をもたらさずにコストをもたらしがちである。
市場シェアの大きな企業は、あらゆる領域において、事業を行なおうとする。
しかし、あらゆる領域において卓越した活動を行なうことができる企業など存在しない。
むしろ小さな特化した企業だけが、時として、自らのあらゆる製品とサービス、あらゆる市場と最終用途、あらゆる顧客と流通チャネルに関して、独自化と差別化できる。
(創造する経営者)
 

中小企業の現実

中小企業の多くが業績不振にあえいでいます。
その原因は様々ですが、根本的な原因は、有効な生態的ニッチ戦略を持っていないことです。
中小企業と大企業は、択一的な存在ではない補完的な存在だった。
中小企業は、自ら際立った存在となるための戦略を考え出さなければならない。
中小企業は、生物学の用語でいえば、自己にとって有利な、また、競争に耐えうるような生態的空間(ニッチ、適所)を見つけ出さなければならない。

しかし、現実には、ほとんどの中小企業が、戦略をもたない。
ほとんどの中小企業が、機会中心ではなく問題中心である。
問題から問題に追われて毎日を送っている。
だからこそ中小企業の多くが、成功しないのである。

中小企業のマネジメントに必要とされることは、「われわれの事業は何か、また、何であるべきか」と自問し、それに応えることである。
それ以外の分野では、抑制と禁欲が必要とされている。
(抄訳 マネジメント)
 

中小企業の限界

自社の可能性ばかりでなく、限界も知ることが健全経営の必須条件です。
そうした意味では、「自社の可能性を知ること」と「自社の限界を知ること」は車の両輪です。
中小企業は限られた資源(ヒト・モノ・カネ)しかもち合わせていない。 とりわけ優秀な人材には限りがある。

したがって、中小企業にとっては、集中化(たとえば資源を重点的に投入したり、ある分野に専心すること)が必須不可欠である。
基幹的な活動がはっきりと識別され、個々人の責任として割り当てられなかったとしたら、集中化どころか資源の分散になる。
(マネジメント、下)
 

戦略の必要

戦略とは、違いを打ち出すことです。
逆に言えば、違いを打ち出せていないものは、戦略とは言えません。
中小企業には、「戦略」が必要である。
中小企業は限界企業になるわけにはいかない。
だが限界企業になる危険は中小企業につきまとって離れない。
したがって中小企業は、なんらかの特色を発揮する戦略を考え出さなければならない。

中小企業は、生物学の用語でいえば、自己にとって有利な、したがってまた競争にも耐えうる、特定の生態的な場所(ニッチ)を見つけ出さなければならない。

場合によっては独自の市場 ― その市場が、地理的条件、消費者の欲求、消費者の価値観のいずれかによって規定される市場であれ ― における主導的地位が、そういった特定の生態条件を備えた場所の一つかもしれない。
また、サービス能力で抜きん出ることも一つの生態的ニッチ戦略なら、特殊技術をもつことも一つの生態的ニッチ戦略だろう。
(マネジメント、下)
 

中小企業はニッチトップを狙うこと

経営資源にかぎりがある中小企業は、限定的な市場でオンリーワンになるか、ニッチトップを狙うのが最良の事業戦略です。
成果は、有能さではなく、市場における独自化と差別化によってもたらされる。
利益とは、意味ある分野において、独自の貢献あるいは少なくとも差別化された貢献を行なうことによって得る報酬である。
そして、何が意味ある分野かは市場と顧客が決定するすなわち利益は、市場が価値ありとし、進んで代価を支払うものを供給することによってのみ得ることができる。

そして、価値あるものとは、独自化と差別化によってのみ実現できる。
しかし、このことは、業界において巨人でなければならないということでも、製品や市場や技術においてトップの地位を占めなければならないということでもない。
規模が大きいということと、独自化・差別化の地位を占めるということとは同じではない。

多くの業界において、最大手でありながら利益率は最高でないという企業は多い。
多くの製品を抱え、多様な市場を相手にし、多様な技術をもたなければならないために、ユニークな仕事はもちろん、多少なりとも差別化された仕事さえ不可能になっているからである。
したがって、むしろ、二番手あるいは三番手のほうが望ましいことが多い。
独自化と差別化できるような市場の一分野、顧客の一階層、技術の一応用に集中できるからである。

= 中略 =

業績をあげるには、顧客や市場において、真に価値あるものについて、独自化と差別化しなければならない。
価値あるものとは、製品ラインの中の小さな、しかし重要な一部、あるいは、サービスや流通、さらにあるいは、アイデアを早く安く製品に変える能力であってもよい。

しかし、そのような独自化と差別化を図らなければ、事業や商品やサービスは、すぐに倒産寸前の限界的な存在になる。

= 中略 =

独自化と差別化は、事業戦略においてとくに重要である。
新製品を出した競争相手や、製品を大幅に改善した競争相手に追いつくだけの戦略では、頼りにならない。
(創造する経営者)
 

生態的ニッチ戦略の魅力

有名になりたい、大きくなりたいという欲望を抑えることができれば、見るべきものが見えてきます。
生態学的地位を確保しようとする戦略は、小さな領域において、実質的な独占を実現することを狙いとする。
生態学的戦略は競争に免疫になろうとする戦略であり、挑戦を受けることさえないようにすることを狙いとする。
生態学的戦略に成功したものは、名よりも実をとることになるそれらの企業は、名もないなかで贅沢に暮らす。
事実、生態学的戦略に成功した企業は、決定的に重要な商品を手掛けながら、ほとんど目立たない。
そのため、誰もこれに挑戦しようとさえしない。
(イノベーションと企業家精神)

2020/02/27

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