何を残し、何を捨てるか|経営判断が1人ではブレる3つの理由
ドラッカーをベースにしたニッチトップ戦略で、モノづくり企業の「価格と取引条件の主導権を取り戻す支援」をしている藤屋伸二です。
選択基準は、1人で考えるほどブレる
何を維持し、何を減らし、何を強化し、何を捨て、何を創るか。
経営では、こうした判断を繰り返します。
この記事では、そのなかでも分かりやすい「残すか、捨てるか」を例に考えてみます。
- 利益が出しにくくなってきた古くからの顧客との取引は、これからも続けるべきか
- 創業当時から主力商品として貢献してきたこの商品は、本当に残すべきか
- 利益が薄いけれど、赤字ではない昔からやってきた仕事をどうするか
一つひとつを見れば、それぞれに残す理由があります。
だから、個別に判断していると、顧客も商品も仕事も、なかなか減りません。
むしろ、年ごとに増えていき、ぜい肉のように会社の健康を損ねていきます。
それが続くと、自社が何をする会社なのかが曖昧になり、他社と同じ基準で比べられる仕事まで抱えるようになります。
そこで待っているのが、相見積もりや業界相場です。
だからこそ、「何を残すか」「何を捨てるか」を決める前に、選択基準が必要です。
ところが、この選択基準そのものを1人で考えようとすると、別の問題が起きます。
選択基準は、1人で考えるほどブレるのです。
理由は3つあります。
自社には、近すぎて見えない部分がある
毎日その中にいると、何が当たり前で、何が特別なのか、区別がつきにくくなります。
たとえば、顧客から急な仕様変更を頼まれても対応できる。
社内では、「すぐにできることだから」で終わっているかもしれません。
しかし、それが積み重なるとコストに見合わない仕事が増えます。
それが本当は、他社には簡単にマネできない利益の源泉なのかもしれません。
反対の場合もあります。
「このやり方が一番確実だ」と思って続けている仕事が、実は利益を圧迫し、社員を疲弊させているかもしれません。
自社の中にいると、強みまで「当たり前」になります。
同時に、長年続けてきた不合理まで「当たり前」になります。
だから、社内の視点から見るだけで判断するのは難しい。
観察力が足りないからではありません。
近すぎるから見えないことがあるからです。
過去の判断を、否定しにくい
捨てる判断が難しいのは、それが単に「不要なものを捨てる」という話ではないからです。
- その顧客を開拓したのは自分かもしれません。
- その商品を育てるために、設備投資をしたかもしれません。
- 社員に、「これからは、この商品を伸ばす」と言ったことがあるかもしれません。
- しかも、これらは過去には売上や利益に貢献しています。
そうなると、「今の自社に必要か」という問いに、「これまで役に立ったか」という別の問いが入り込んできます。
- 昔からの顧客だから
- ここまで育てた商品だから
- まだ赤字ではないから
- 社員も慣れているから。
どれも嘘ではありません。
だからこそ厄介なのです。
捨てる候補ほど、残す理由はいくらでも見つかります。
しかし、本来問うべきなのは、「過去に正しかったか」ではありません。
「これから目指す事業に必要か」です。
過去の判断が正しかったことと、これからも続けることは、別の問題です。
ブレを、止める人がいない
1人で考えていると、判断基準が変わっても、自分では気づきにくいものです。
月曜日には、「利益率の低い仕事は減らそう」と決める。
ところが水曜日に、長年の顧客から相談が来る。
すると、「この会社だけは特別だから」となる。
金曜日には営業から、「この商品は薄利だけど売上が大きいので、もっと伸ばしたい」と言われ、「売上は大事だからな」となる。
一つひとつには、もっともらしい理由があります。
問題は、判断するたびに物差しが変わっていることです。
利益率で判断したり、売上で判断したり、付き合いで判断したり、将来性で判断したりする。
これでは、どれだけ考えても選択基準は固まりません。
しかも1人なら、「月曜日と言っていることが違いませんか」と問い返す人がいません。
ブレていること自体に、気づきにくいのです。
1人で考える限り、この3つの迷いの元は消えない
- 近すぎて見えない
- 過去の判断を否定しにくい
- 判断するたびに物差しが変わる
この3つは、時間をかけて慎重に考えれば消える問題ではありません。
「1人で考える」という状況から生まれているからです。
だから必要なのは、経営者に代わって答えを出す人ではありません。
外から問い返す人です。
- なぜ、この顧客は残すのですか
- それは、これから目指す事業に必要だからですか。それとも、昔から付き合っているからですか
- こちらの商品を捨てるのに、なぜ同じ条件の商品は残すのですか
こう問われると、自分の頭の中だけにあった判断の前提が、言葉になります。
言葉になれば、矛盾にも気づけます。
そして初めて、「自社は、何を基準にしている会社なのか」を明確にできます。
外の視点を入れる目的は、答えをもらうことではない
ここは重要です。
外部の人に、
- この顧客は捨てたほうがいい
- この商品は残したほうがいい
と決めてもらうことが目的ではありません。
それでは、経営判断を外注することになります。
必要なのは、外の視点を使って、自社だけでは見えなかった前提や矛盾を表に出すことです。
そのうえで、「これから、どんな事業を目指すのか」を明確にする。
そこから、何を維持し、何を減らし、何を強化し、何を捨て、何を創るかを判断する。
つまり、先に決めるべきなのは「何を捨てるか」ではありません。
目指す事業です。
目指す事業が具体的になれば、
- これは残す
- これは減らす
- これはもっと強化する
- これは捨てる
- これは新しく創る
という判断にも、一貫した理由を持たせられます。
外の視点が必要なのは、正解を教えてもらうためではありません。
自社の選択基準を、自社だけでは見えないところまで含めて明確にするためです。
自社の選択基準は、今、言語化されているでしょうか。
そして、言語化された基準で判断したとき、残す顧客、商品、仕事は、本当に今と同じ答えになるでしょうか。
外部の視点を織り込みながら、目指す事業から自社の選択基準をつくる。
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