ブルー・オーシャン戦略|ブルーオーシャンは、どうすれば続くのか
この理論は、何を教えてくれたか
W・チャン・キムとレネ・モボルニュは、INSEADの教授です。
二人の議論は、1990年代後半からのハーバード・ビジネス・レビューの論文に始まります。
1997年の「バリュー・イノベーション」がその一つです。
それらをまとめた『ブルー・オーシャン戦略』が出たのが、2005年。
2015年には増補改訂版が出ています。
土台にあるのは、100年にわたる30の業界、150を超える戦略的な打ち手の分析でした。
そこから示されたのが、2つの海のたとえです。
- レッド・オーシャン:既存の市場空間で、決められた境界の中を競い合う
- ブルー・オーシャン:まだ開拓されていない市場空間をつくり、新しい需要を生み出す。
バリュー・イノベーション
この本の中心にあるのが、バリュー・イノベーションです。
それまで、戦略には1つの前提がありました。
- 価値を高めればコストが上がる
- コストを下げれば価値が落ちる
- どちらかを選ぶしかない。
2人は、この二者択一を否定しました。
買い手にとっての価値を上げながら、同時にコストを下げる。
これが、新しい市場をつくる条件だ、と。
戦略キャンバスという手法
そのための道具が、戦略キャンバスです。
- 横軸に、業界が競い合っている要素を並べる
- 縦軸に、各社がその要素にどれだけ力を入れているかを取る
- 線を引くと、価値曲線ができる。
ここで見えてくるのが、同じ業界の会社の曲線が、よく似てくることです。
同じ要素で、同じように競い合っている。
曲線が重なっているのです。
4つのアクション
では、どう曲線を変えるのか?
- 業界が当然としてきた要素のうち、取り除くものはどれか?
- 業界の標準より大きく減らすものはどれか?
- 業界の標準より増やすものはどれか?
- 業界がまだ提供していない要素のうち、付け加えるものはどれか?
取り除くと減らすが、コストを下げる。
増やすと付け加えるが、買い手にとっての価値を上げる。
本著では、サーカスから動物のショーを取り除いた例が、よく知られています。
◆非顧客層を見る
もう1つ、2人が向けたのは、いま買っていない人たちです。
- 既存の顧客を細かく分けていくと、市場は小さくなっていく
- そうではなく、買っていない層に目を向ける
- なぜ買わないのかを見る
- そこに、まだ形になっていない需要(満たされていないニーズ)がある。
2人が解こうとした問題は何か
1つの問いにまとめます。
新しい需要を、どうすれば創れるのか?
決まった市場の取り分を争うのではなく、満たされていないニーズの市場そのものを新しくつくる。
そのために、業界が当然としてきた前提を疑い、顧客にとっての価値を組み直す。
模倣について、2人が書いたこと
ここは、見落とされやすいところです。
『ブルー・オーシャン戦略』は、模倣される問題を扱っていない本ではありません。
むしろ、模倣が起きにくい理由を、正面から並べています。
- 他社が、その戦略を理にかなったものと思わない
- 既存のブランドや事業と衝突(ジレンマ)する
- 特許で守られている
- 規模の経済が働く
- 利用者が増えるほど価値が上がる仕組みになっている
- 模倣するには、事業を大きくつくり替えなければならない
- こうした事情が重なって、模倣までの時間が延びる
そのうえで、2人はこうも書いています。
やがて、ほとんどのブルー・オーシャンは模倣される
だから、同質競争かどうかを見える化している価値曲線を見続ける。
自社の曲線が他社の曲線と重なり始めたら、そこは赤くなってきている。
そのときが、次のバリュー・イノベーションに動くときだ、と。
つまり、ブルー・オーシャンは終点ではありません。
状態です。
そして、その状態が続いているかどうかを見る方法も、理論の中に用意されています。
モノづくり企業への応用
ここから、自社に当てはめて考えてみましょう。
2人は、自社の価値曲線が他社と重なり始めていないかを見るように求めています。
ここから、御社の事業へ目を移します。
価値曲線とは別に、もう1つ確認したいことがあります。
これはキムとモボルニュが立てた問いではありません。
藤屋式ニッチトップ戦略が立てる問いです。
今、価格と取引条件の主導権は、自社と顧客のどちら側にあるか?
- 新しい商品をつくった
- 新しい売り方を試した
そこまでは、問題ありません。
- では、そのあと、価格の話はどう進んだのか?
- 取引条件は、どちらが決めたか?
ここは、市場の外側から眺めても分かりません。
自社の具体的な事業の状況を見るしかありません。
御社は、他社と比べられていないか
3つだけ、確認してみてください。
- 相見積もりを求められることはないか?
- 業界相場が価格の基準になっていないか?
- 他社の名前が出てくる商談はないか?
技術力の違いは、選ばれる理由になります。
しかし、他社と比べられる状態が残っていれば、価格と取引条件まで自社で決められるとは限りません。
問うべきなのは、技術力があるかどうかではありません。
その技術力が、価格と取引条件の主導権にまでつながっているかどうかです。
もう1つの視点
では、価格と取引条件の主導権を持つために、どんな視点があるのか?
ここで、もう1つの考え方があります。
同じ物差しの上で、より高い評価を得ようとするのではなく、そもそも同じ物差しで比べられにくい市場地位をつくるという考え方です。
ドラッカーは、こうした位置をエコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)として論じました。
藤屋式では、この考え方を、モノづくり企業の事業設計に落とし込みます。
戦略設計の6変数を、1つのシステムとして設計する
ただし、その市場地位は、強みだけでも、市場選びだけでもつくれません。
強み×商品×提供方法×価格×顧客層&市場×メッセージ発信
この6つを、別々に考えるのではなく、1つのシステムとして整合させます。
問うのは、一つひとつが他社と違うかどうかではありません。
戦略設計の6変数を掛け合わせた結果として、他社と同じ物差しで比べられる状況から抜け出せているかどうかです。
自社の事業を点検する
戦略設計の6変数を1つの事業として整合させるには、御社で当たり前になっていることも、問い直す必要があります。
- この価格は、どうやって決まったのか?
- この売り方を、なぜ続けているのか?
- この顧客に、なぜ応えているのか?
長く続けてきたことほど、理由を問い直す機会は少なくなります。
自社だけで考えていると、問い直しにくいところでもあります。
藤屋式では、藤屋から質問とアドバイスを受けながら、自社の事業戦略を設計します。
進め方は、2つあります。
短期間で、コンサル的に設計する:藤屋式ニッチトップ戦略|設計プロジェクト
自社だけの場で、自社の事業に集中して設計します。
技術、顧客、価格、取引条件など、他社と同じ場では話しにくいところまで踏み込んで、事業を組み立て直します。
継続して、設計・検証・修正を続ける:藤屋式ニッチトップ戦略塾
設計して、実行して、現実に照らして、また直す。
これを続ける場です。
藤屋に加えて、経営者仲間からも質問とアドバイスを受けながら取り組みます。
※ 藤屋式では、売上の拡大を先に置く「増収増益」ではなく、価格と取引条件の主導権を先に取り戻す「増益増収」と考えます。
売上を増やして確実に増えるのはコストであり、利益が増えるとは限らないからです。
名著シリーズ 各回へのリンク
第1回 ポーターの競争戦略|価格と取引条件を誰が決めているか
第2回 コア・コンピタンス|強みは、価格と取引条件に反映されているか
第5回 イノベーションのジレンマ|いまの商品を、自ら陳腐化できるか


