リーダー企業の事業を共喰いさせる戦略

価格で参入障壁をつくる

高級路線の企業は、低価格路線には入って行けません。同じように、低価格路線の企業は、高級路線に入っていけません。たとえ、企業側が入って行きたくても、顧客が認めないからです。

例えば、ユニクロ(ファーストリテイリング)のスタート時を思い出してください。同社はデパートで数千円から1万円近くで販売していたのと同程度の品質の衣類を、千円くらいで販売し、それまでの「高品質・高価格」の常識を覆し、「高品質・低価格」のビジネス・モデルを打ち立て、急激に売上げを伸ばしてきました。

しかし、デパートは、それに追随できませんでした。もし、追随すれば、数千円から1万円近くで販売するビジネス・モデルが崩壊するからです。

ユニクロの初期には、「あれは違う市場の衣類」と高をくくっていたデパートのバイヤーたちも、自社の衣類と大差ない品質だと分かってきました。

ですから、ユニクロに追随すれば、「高品質・高価格のこれまでの衣類」が、「高品質・低価格の新規の衣類」に喰われてしまうことは明白でした。しかし、遅かれ早かれ、旧来のビジネス・モデルが崩れることも明白でした。そこに対応したくてもできないジレンマがあったのです。

このように、ジレンマに追い込むような事業にするのが、「事業を共喰いさせる戦略」です。

もう1つ、事例をあげておきましょう。大きな駅近くに、充実した設備を完備し、高い会費を徴収する大型の総合スポーツジムに対して、住宅地の近くで安い会費で最低限の設備でスポーツジムを展開するカーブスが業績を伸ばしています。

同社のビジネス・モデルは、デパートに対するユニクロとほとんど同じです。もし、総合スポーツジムが、カーブスのビジネス・モデルに参入したら、高い会費を払う総合スポーツジムからカーブスに会員が移行するかもしれません。そうすると、自ら築いたビジネス・モデルが崩壊してしまいます。

ですから、ビジネス・モデルが崩壊することが明白になるまで、総合スポーツジム・モデルを変えることはありません。

そこで、ニーズの棲み分けができれば、両方のビジネス・モデルとも生き残ることができます。

なお、カーブスの特徴は、インストラクターを中心にした「コミュニティ」だとも言われています。中高年の女性が主な顧客ですから、強力なコミュニティができあがることでしょう。ただし、これを嫌う人もたくさんいるので、最初からコミュニティを嫌う人を「捨てる勇気」が必要になってきます。