ドラッカーのイノベーションは創造的な模倣で起こす

既存の制度の用途開発をする

かつて、個人の荷物は、郵便小包として郵便局まで持ち込めば、個人の家にも配達してくれていました。

一方、法人の荷物は、企業や工場まで運送業者が集荷に出向き、送り先の企業や会社や店まで配送してくれていました。

個人用の荷物の輸送に、法人のシステムを応用したのがクロネコヤマトの「宅急便」です。そのために新たに必要になったのは、きめ細かな集荷・配送センター、集客システムだけでした。他は、既存システムの応用・補強です。

しかし、その便利さのおかげで、2014年度の宅配便(ゆうパックなども含む)の総数は36億個を超えるまでになっています。

お役所仕事時代の郵便局の小包制度は、不親切だし、不便だし、面倒くさかったので、よほどの必要性がないかぎり、利用しようとは思わなかったのです。宅急便は、包装もきびしく言わず、翌日配送、再配達、時間指定配達、クール宅急便、スキー宅急便、ゴルフ宅急便など、新しいサービスを次々に開発して、顧客満足度を高めていきました。そうした弛(たゆ)まない努力が、新しい利用者を天文学的に増やしていったのです。

大企業の傲慢さがニッチ戦略のチャンス

独占企業や市場シェアトップの企業は、自社都合を押し付けるという「傲慢」(ごうまん)に陥りがちです。また、そのような企業は固定費が高いため、効率を優先するようになっていきます。

したがって、比較的単価が低い商品分野で、対象顧客を絞り込み、面倒くさいニーズにきめ細かく対応すると、確実に一定の売上げを確保することができるようになります。つまり、既存の仕組みから、何かを加えたり、何かを足したりして、特定の顧客のニーズに細かく応える商品やサービスにすれば良いのです。

自社用のノウハウの活用法でニッチ戦略を築く

中小企業でも、高齢者の多い業界では、面倒な対応、小回りを利かせる対応を嫌う傾向が強くなります。そこにも、面倒な仕事を厭(いと)わずにすれば、ニッチなビジネス・チャンスが発見できます。

例えば、佐賀県(日本を代表する有田焼の産地)で陶磁器の原料(粘土)を製造している有限会社渕野陶磁器原料(従業員10名)の渕野直幸社長は、高齢化が進む同業界では、50代でも若手経営者に属します。

彼の粘土に関する知識は日本でもトップクラスで、佐賀県から遠い茨城県立笠間陶芸大学校で、非常勤講師(磁器土・原料基礎講座などを担当)を務めるほどです。

問い合わせてくる若手の陶芸家などに対して、「丁寧」かつ「親切」に、保有する「粘土と釉薬(うわぐすり)と陶磁器を焼く温度に関する知識」を惜しげもなく伝えています。

それによって、焼成(焼き入れ)のときに割れる確率がずっと下がります。

そのような彼の姿勢が経営全般に影響しており、縮みゆく陶磁器の原材料の市場(有田焼に関して、2012年はピーク時の20%)で、前年比8%アップというとんでもない売上げを創り出しています。

渕野社長は、自社の粘土づくりのための知識を、サービスとして提供するようになったのです。

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