「100億円宣言」をする前に、問うべきことがある
~「手段が目的になる」経営の落とし穴 ~
政府が推進する「100億円企業宣言」。
中小企業が売上100億円という高い目標を掲げ、成長を加速させる。
その方向性そのものを、私は否定するつもりはありません。
しかし、次のようなドラッカーの言葉があります。
「手段はすぐに目的のふりをする」
この視点で見ると、少し立ち止まる必要があると感じています。
■ 売上100億円は“目的”なのか
売上高は、あくまで結果です。
経営の本質は「価値創造」にあります。
ところが、外形的な数値目標が掲げられると、いつの間にかそれが“到達点”のように扱われます。
・100億円に届くかどうか・規模が拡大しているかどうか・企業として大きくなっているかどうか
こうした視点が前面に出ると、本来問うべき「どんな価値を、誰に、どのような構造で提供しているか」という問いが後退します。
売上が増えても、利益が薄い。
社員は忙しいのに、将来への余力が生まれない。
価格決定権が顧客側にあるまま。
これでは、量(売上)は増えても質(利益率)は変わっていません。
いや、かえって下がるリスクのほうが大きくなります。
■ 企業の成長とは、売上の拡大ではない
ドラッカーは、「企業は必ずしも売上を拡大する必要はない。しかし、質は向上させなければならない」と言っています。
質的向上とは、
- 顧客を選べる状態になっているか?
- 適性(提供価値に見合った)価格が受け入れられているか?
- 無理な売上拡大を追わなくてよい構造か?
- 利益が将来投資を生んでいるか?
です。
こうした“経営状態”の変化です。
売上100億円を掲げること、そのものが問題なのではありません。
問題は、それが経営の質を問わないまま、単なる売上拡大競争を最優先してしまうことです。
数値目標は分かりやすい。
だからこそ、経営者の判断基準を曇らせる危険もあります。
■ エコロジカル・ニッチという別の視点
私が提唱しているのは、ドラッカーの企業家的戦略の1つであるエコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)という考え方です。
これは、一般論で語られるニッチ(隙間)市場の確保ではありません。
構造的に代替されにくく、適性価格を設定・維持できる市場地位のことです。
ここに立てているかどうか。
それが、規模よりも先に問うべきことだと考えています。
したがって、売上100億円を目指す前に、
- 自社の真の強みは何か?
- その強みで再設計した商品・提供方法は何か?
- その価値を本当に必要とする顧客は誰か?
- その顧客にとっての適性価格はいくらか?
ここが曖昧なままでは、売上だけが拡大しても、自社の望む価格は通らず、利益は薄くなる可能性があります。
それは「成長」ではなく、たんなる「膨張」です。
■ 手段と目的を取り違えないために
政策は、外部環境です。
活用するかどうかは、企業側の判断です。
重要なのは、売上100億円を目標にする前に、高付加価値で増益増収させる事業構造を設計しているかどうか、です。
- 価格決定権はどこにあるか?
- なぜ自社が望む価格がペルソナ的な受け入れられるのか?
- 他社が容易に代替(参入)できない理由は何か?
ここが明確になっていれば、規模は結果としてついてくることもあります。
しかし、収益構造が曖昧なまま100億円達成だけを追えば、消耗戦は避けられません。
ドラッカーの「手段はすぐに目的のふりをする」の言葉の意味から、今一度、100億円宣言を考えてみてください。
■ まずは、現在の経営状況を可視化する
では、自社はどうなのか。
- 価格交渉が増えていないか?
- 相見積もりが当たり前になっていないか?
- 原価上昇を価格に十分、反映できているか?
- 顧客を選べているか?
もし一つでも「?」があるなら、問題は努力不足ではなく、「市場地位の設計」にある可能性があります。
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