― エコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)を設計する ―
売上を伸ばしながら、利益率を上げる。
藤屋式ニッチトップ戦略は、この一点を扱います。
技術力はある。
それなのに、売上をさらに伸ばす方法が見えない。
利益率も、技術力に見合っているとは言えない。
数字だけ見れば、悪くない。
何を見直せば、変わるのでしょうか。
商品でしょうか。
営業でしょうか。
新しい顧客を増やすことでしょうか。
どれも、間違っていません。
しかし、それだけでは変わりません。
では、この数字は、いつまで続くでしょうか。
伸ばすべきなのは、利益の出る売上です。
それを決めているのは、個々の施策ではありません。
戦略の構造そのものです。
売上伸長と利益率を阻んでいる原因は、一つです
売上を伸ばしながら、利益率を上げる。
これを難しくしているものが、一つあります。
他社と比べられ、競争させられる、ということです。
技術力の違いは、一時的には、選ばれる理由になります。
実際、それで受注できることもあります。
しかし、価格と取引条件は、据え置かれたままです。
選ばれた理由が技術力であっても、顧客の物差しが価格と納期などのままだからです。
そして、同じ物差しの上での違いは、他社が追いつけます。
いずれ、他社も同じことができるようになります。
そうなれば、また次の違いを出さなければなりません。
違いを出しても、また、すぐに追いつかれます。
これが、同質競争です。
磨いた分だけ追いつかれ、終わりがありません。
だから、技術力だけを磨いても、売上伸長にはつながりません。
そして、その状況で売上を伸ばそうとすれば、価格と取引条件を顧客に譲歩することになります。
だから、利益率も上がりません。
売上伸長と利益率アップ。
別々の問題に見えて、原因は一つです。
顧客から、他社と同じ物差しで比べられていることです。
藤屋式ニッチトップ戦略とは
藤屋式ニッチトップ戦略とは、エコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)を設計し、他社と比べられない状態をつくる事業戦略です。
これは、比較される状況の中で、顧客から選ばれる順位を上げることではありません。
他社と同じ土俵に乗らなくてすむ。
そういう市場地位をつくります。
目指すのは、次の状態です。
- 顧客を選べる
- 選んだ顧客から、指名される
- 価値に見合う適性価格で取引できる
- 取引条件を、自社から提示できる
- 他社に代替されにくい
この市場地位を、エコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)と呼びます。
「マネジメントの父」と呼ばれたドラッカーが示した概念です。
価格と取引条件の主導権は、交渉によって取り戻すものではありません。
この市場地位が成立したとき、自社に戻ります。
なお、これは事業戦略です。
全社の資源配分や、事業ポートフォリオを扱うものではありません。
扱うのは、一つの事業が市場でどう存在するか、です。
ただし、決めるのは経営者です。
・顧客層&市場を減らす。
・商品を捨てる。
これらは、担当者の判断で動かせるものではありません。
そして、事業が一つであれば、事業戦略の再設計は、そのまま経営の再設計になります。
こんな経営者のための事業戦略です
技術力には、自信がある。
他社にはマネできない強みがある。
あるいは、他社が対応したがらないニーズにも応えている。
それなのに、価格と取引条件の主導権は、自社にない。
顧客が握っている。
あるいは、業界相場に準じている。
これは、技術力の問題でしょうか。
それとも、その技術力が、価格と取引条件の主導権に結びついていないという問題でしょうか。
藤屋式ニッチトップ戦略は、後者を扱います。
技術力も、他社が対応したがらないニーズに応えてきた実績も、エコロジカル・ニッチの要素です。
つまり、戦略設計の各要素と、価格と取引条件の主導権を持つということは、別のものなのです。
エコロジカル・ニッチとは何か
生態学におけるニッチとは、生き物が「どこで、何を食べ、どう生き延びているか」という生存の仕方を意味します。
経営に置き換えると、それは市場での順位ではありません。
どの顧客の、どのニーズに、自社だけが応えるか、です。
横並びで比べられる市場の中で、順位を上げることではありません。
ある特定のニーズに、自社だけが応える。
その状態を設計することです。
そこでは、他社と同じ物差しで比べられること自体が、起きにくくなります。
一般的なポジショニングとの違い
一般的なポジショニングは、同じ市場の中での位置取りです。
同じ評価基準、同じ価格帯の中で、自社をどこに置くかを決めます。
他社との比較を前提にしています。
一般的な差別化も、同じです。
他社と比べられることを前提に、その中で違いを打ち出します。
エコロジカル・ニッチは、前提が違います。
比べられるという前提そのものを外します。
他社が対応したがらない特定ニーズに、自社だけが応える。
そうやって、事業そのものを変えていきます。
ここに、決定的な違いがあります。
なぜ、その領域に他社は入ってこないのか
多くの企業は、標準化・効率化・大量化・短期的な売上拡大を優先します。
そのため、次のような領域には、積極的に参入しません。
- 手間がかかる
- 時間がかかる
- カスタマイズが必要
- 規模の利益が出にくい
- 高度な対応力が必要
しかし、その中には「面倒だが、価値が高いニーズ」が存在します。
藤屋式ニッチトップ戦略は、そのニーズに自社だけが応える事業を設計し、エコロジカル・ニッチを築いていく戦略です。
エコロジカル・ニッチは、何によって成立するのか
では、その市場地位は、何によって成立するのでしょうか。
戦略の構成要素を、一つひとつバラバラに強化することではありません。
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
これら6つが、戦略の構成要素です。
藤屋式では、これを戦略設計の6変数と呼びます。
この6つが、一つの戦略として整合したとき、エコロジカル・ニッチは成立します。
そして、比較される状況も、この同じ6つがつくっています。
だから、比較される状況は、業界の宿命ではありません。
戦略の構造が生んだ結果です。
足し算ではなく、掛け算です。
一つでも整合が崩れれば、戦略全体は機能しません。
強みを磨いても、顧客層&市場が業界のままなら、比べられる状態は続きます。
価格を見直しても、メッセージ発信が他社と同じであれば、価値の違いは認識されません。
戦略設計の6変数は、チェックリストではありません。
着手順でもありません。
エコロジカル・ニッチを成立させる、設計変数です。
どの戦略変数から手をつけるのか
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信。
これは、表記の順序です。
実践で、どの変数から手をつけるかは、企業によって違います。
課題も着眼点も異なるので、違うのが当然です。
価格から入る会社もあれば、顧客層&市場から入る会社もあります。
入口は、その会社の課題が決めます。 要件は一つです。
最後に、6変数が整合していること。
戦略設計の6変数を、どのように見直すのか
6変数を見直すときに使うのが、戦略再設計の5指針です。
維持する・減らす・強化する・捨てる・創る
たとえば、
強みは、維持するのか、強化するのか。
商品は、減らすのか、捨てるのか。
顧客層&市場は、どこを減らし、どこを創るのか。
6つの変数それぞれを、この5つの指針で見直します。
そして、6変数全体が一つの戦略として整合しているかを確かめます。
これが、藤屋式ニッチトップ戦略の設計です。
この戦略が目指す経営状態
藤屋式ニッチトップ戦略が目指すのは、次の経営状態です。
- 市場での状態:価格と取引条件の主導権を持つ。顧客を選べる
- 数字の状態:競争価格ではないので利益率が上がる。その利益で、売上を伸ばす投資ができる
- 社内の状態:顧客の要望に振り回されることがなく、生産性が上がる。社員が疲弊しない
目指すべきは、単なる売上拡大ではありません。
伸ばすべきなのは、利益の出る売上です。
だから、増収増益ではなく、増益増収なのです。
常識的に考えると、売上を増やせば、確実に増えるのはコストです。
しかし、利益が増えるかどうかは、わかりません。
だから、売上を伸ばしながら、利益率を上げるためには、価格と取引条件の主導権を、先に取り戻さなければなりません。 ※ 藤屋式では、売上の拡大を先に置く「増収増益」ではなく、価格と取引条件の主導権を先に取り戻す「増益増収」と考えます。売上を増やして確実に増えるのはコストであり、利益が増えるとは限らないからです。
まとめ
藤屋式ニッチトップ戦略とは、小さな市場を狙う戦略ではありません。
エコロジカル・ニッチ(生態学的市場地位)を設計し、他社と比べられない状態をつくる事業戦略です。
技術力だけを磨いても、売上伸長にはつながりません。
技術力は、6つの変数のうちの一つ(強み)だからです。
6変数が一つの戦略として整合したとき、技術力の違いが、選ばれる理由になります。
そして、その価値が、適性価格に反映されます。
- 他社と比べられなくなる
- 顧客を選べるようになる
- 価格と取引条件の主導権が、自社に戻る
今の業績は、いまの戦略の構造が生んでいます。
戦略の構造が変わるまで、今の状態は続きます。
市場で順位を上げるのではなく、自社だけが応える独自の事業を設計する。 売上を伸ばしながら、利益率を上げる。
そのための設計が、藤屋式ニッチトップ戦略です。
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