品揃えを増やすか、絞るか。何を基準に決めるか
売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。
ほとんどの商品には、増やす理由も、絞る理由もある
商品を絞ったほうがいい、と言われます。
あれもこれも手を出すから、どれも中途半端になる。
集中しろ、と。
一方で、品揃えを広げたほうがいい、とも言われます。
顧客はワンストップの取引のほうが便利。
対応範囲が狭いと、そもそも声がかからない。
どちらにも、根拠があります。
実際、絞って強くなった会社も、広げて伸びた会社もあります。
自社はどうすべきか。
今扱っている商品を見渡しても、判断がつきません。
減らすべきものもある気がするし、足りないものもある気がします。
では、商品構成は、何を基準に決めればいいのでしょうか。
「増やすか、絞るか」では決まらない
この問い自体を見直す必要があります。
増やすか、絞るか。
この二択で考えると、商品構成全体を一つの方向へ動かすことになります。
しかし、実際の判断は商品ごとに違います。
- 伸ばすべき商品と、比重を下げるべき商品が同時にあります
- 新しく加えるべきものと、やめるべきものも同時にあります
- 結果として商品数が増えることもあれば、減ることもあります
ただ、それは判断の結果であって、判断の目的ではありません。
商品数は、決めるものではなく、決まるものです。
だから、「増やすか絞るか」という問いには、一つの答えはありません。
問うべきなのは、一つひとつの商品を何に照らして判断するかです。
単に数で見ても、分からない
商品数を見ても、集中しているかどうかは分かりません。
商品が多くても、同じ強みを生かし、同じ顧客層に向けているとします。
そこに共通する価値が生まれていれば、経営資源は分散していない場合があります。
商品構成についても同じです。
自社では10種類の商品だと思っているとします。
しかし顧客から見れば、一つの用途に必要なものが揃っているだけかもしれません。
商品数は判断材料の一つです。
ただ、その数だけを見て決めることはできません。
「多すぎるから減らす」「少ないから増やす」とは言えません。
基準は、目指す事業にある
判断の基準になるのは、目指す事業です。
どういう顧客に、どのような価値を生み出す事業なのか。
それが具体化されていれば、一つひとつの商品を考えられます。
判断基準は、その事業に必要なのかどうかです。
目指す事業が定まっていないとします。
そのときは、その時々で目立つ情報が実質的な判断基準になりやすくなります。
売上や利益、顧客の要望、営業の声などです。
もちろん、売上も利益も重要です。
しかし、それらは主として現在の成果を示しています。
売上が大きいから、将来も経営資源を向けるべきだとは限りません。
反対に、現在の売上が小さいから、将来も必要ないとは限りません。
売れているのに、目指す事業から外れている商品があります。
まだ売上は小さいのに、これから目指す事業の中心になる商品もあります。
だから、現在の数字だけでは商品構成を決められません。
ドラッカーは、廃棄と集中をどう考えたか
ドラッカーは、すでに行っていることを体系的に問い直す必要があると考えました。
商品も例外ではありません。
そのときに使う問いがあります。
もし、今これを行っていなかったとして、新たに始めるか。
これを商品に当てはめます。
この商品を今持っていなかったとして、それでも今から始めるか。
そういう問いになります。
「始めない」という答えが出たときに、なぜ現在も続けているのかを考えます。
- 以前は必要だった
- 大きな投資をした
- 長年の顧客がいる
- 社内に担当者がいる
どれも、もっともな事情ではあります。
しかし、それだけで将来も経営資源を向け続ける理由になるとは限りません。
ドラッカーは、体系的廃棄を重視しました。
理由の一つは、昨日のものに資源を使い続けることにあります。
それでは、今日の機会や明日の成果へ向ける資源がなくなります。
廃棄は、減らすこと自体が目的ではありません。
次に経営資源を向けるために、何から資源を外すかを決めることでもあります。
集中も同じです。
集中するから商品数を減らすのではありません。
限られた経営資源を、成果につながるところへ向けます。
その結果として、商品が減ることも、増えることもあります。
不採算商品から撤退し、次の技術へ資源を向ける
2025年版中小企業白書に、大阪府岸和田市の松浪硝子工業株式会社が紹介されています。
同社の電子機器用ガラス事業は、海外商品との価格競争に陥りやすい事業でした。
その事業は6年連続で赤字となっていました。
それでも同社は、足元の売上目標の達成を重視していました。
人員配置や設備投資も続けていました。
転換したのは、2023年です。
安原弘泰社長は、従来の3か年計画を9か年計画へ変更しました。
より長期的な成長を見据えたものです。
特徴的なのは、電子機器用ガラス事業の売上をすぐに伸ばそうとしなかったことです。
2032年の目標から逆算しました。
2029年までは、あえて2023年実績を下回る売上目標を設定しています。
そして、不採算商品から撤退しました。
一方で、時間のかかる新技術開発や産学連携に取り組むことにしました。
技術開発人材や、海外法務、薬事を担当する人材の採用・育成にも取り組んでいます。
そのおかげで、計画初年の2024年には、電子機器用ガラス事業が黒字に転換しました。
ここで見るべきなのは、商品を減らしたから黒字になった、ではありません。
事は、そう単純化することではありません。
白書から確認できるのは、次のことです。
- 将来の目標から、現在の商品構成と資源配分を見直した
- 不採算商品から撤退すると同時に、新技術開発や産学連携へ取り組んだ
減らす側だけを見ていたのではありません。
次に何へ資源を向けるかまで決めています。
(出典:中小企業庁『2025年版中小企業白書』)
商品構成を、五つに分けて考える
藤屋式ニッチトップ戦略では、商品構成を「増やすか、絞るか」の二択では考えません。
一つひとつの商品を、目指す事業に照らして、戦略再設計の5指針で見直します。
維持する/減らす/強化する/捨てる/創る
- 維持する:目指す事業に照らして、現在の状態を維持すると決める
- 減らす:必要性は残るが、経営資源の配分を小さくする
- 強化する:目指す事業の中で重要度が高く、より多くの経営資源を向ける
- 捨てる:目指す事業に照らして、今後は経営資源を向けないと決める
- 創る:目指す事業に必要だが、現在はないものを新たにつくる
この五つを当てると、「増やすか絞るか」という二択が崩れます。
- 減らす商品がある一方で、創る商品がある
- 捨てる商品がある一方で、強化する商品がある
- 維持すると決める商品もある
会社全体として商品数が何種類になるかは、その判断をした後で決まります。
だから、先に商品数を決めることが戦略とは限りません。
「商品を30%減らそう」「あと10商品増やそう」といった決め方です。
ただし、この判断も商品単体では行いません。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。
強み × 商品&商品構成 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
一つひとつの商品が、この6変数の組み合わせの中でどの役割を担うのか。
そこを見たうえで、5指針のどれを当てるかを判断します。
減らすと決めても、すぐには切れない
もう一つ、分けて考える必要があります。
戦略として何を減らすか、捨てるかという判断と、いつ実行するかは別です。
- 減らす、捨てると判断した商品が、現在の売上を支えていることがあります
- 長年の取引先が使っていることもあります
- 設備投資との関係もあります
だから、判断した翌日にすべてやめるとは限りません。
条件を決めて移行します。
そして、減らす、捨てるだけで終わらせません。
そこで空いた人、設備、資金、時間を、強化するもの、創るものへ向けます。
そうしなければ、商品整理がそのまま縮小均衡になってしまいます。
商品数ではなく、目指す事業から決める
品揃えを増やすか、絞るか。
この問いに、一つの答えはありません。
増やすことも、絞ることも、判断の結果として起きるものだからです。
見るのは、一つひとつの商品が、目指す事業の中でどのような役割を持っているかです。
そして、維持する/減らす/強化する/捨てる/創る、の五つに分けます。
その結果として、商品数が増えることも、減ることもあります。
商品数は、決めるものではなく、決まるものです。
- 今、扱っている商品を、五つに分けられるでしょうか?
- その商品を判断する前に、目指す事業をどこまで具体化できているでしょうか?
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