新しいことをしているのに、なぜ利益にならないのか
売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。
新しいことはやっている。それが利益にならない
- 新製品を出しました
- 新しい設備も入れました
- 展示会にも出しています
- 社内でも、新しい取り組みが動いています
- 試作サービスも開始しました
- いくつかの特許も取得しています
それでも、利益率は思うように上がりません。
新しいものが、なかなか数字に結びつかないのです。
新しいことをしないと先がない、とは思っています。
ただ、新しいことをすれば利益が増えるわけでもありません。
新しい取り組みは、どうすれば利益を生むのでしょうか。
「新しい」と「イノベーション」は同じではない
ここで、最初に分けておきたいものがあります。
自社にとって新しいというだけでは、イノベーションとは限りません。
- 新しい技術を使った
- これまでにない材料を採用した
- 新しい機能を付けた
- 自社では初めての商品を開発した
御社にとっては、たしかにどれも新しい。
しかし、新しいという事実だけでは、顧客に新しい価値が生まれたとは限りません。
ここには、分けて考えるべき二つのものがあります。
まず、自社にとっての新しさ。
これまで扱ってこなかった技術。
使ったことのない材料。
初めて参入する市場。
そして、顧客に生まれる新しい価値や満足。
これまで解決できなかった問題が解決する。
できなかったことができるようになる。
これまでとは違う満足が生まれる。
この二つは、必ずしも一致しません。
自社にとって新しい商品でも、すでに他社が提供しているものがあります。
それなら、顧客から見れば選択肢が一つ増えただけかもしれません。
反対に、自社にとっては長年使ってきた技術でも、これまでとは違う用途に使えば、顧客に新しい満足を生み出すことがあります。
自社にとって新しいことと、顧客に新しい満足が生まれること。
この二つは別です。
イノベーションかどうかは、自社にとっての新しさだけでは決まりません。
問うべきなのは、「どれだけ新しいか」ではありません。
「顧客に何を新しく生み出したか」です。
ドラッカーは、イノベーションをどう考えたか
ドラッカーは、イノベーションを技術的な発明には限定していません。
新しい、あるいはこれまでとは異なる価値や満足を生み出す。
そして、経営資源が成果を生む力を高める。
そうしたものとして捉えています。
だから、新技術を開発したことだけでイノベーションになるわけではありません。
反対に、新技術がなくても、イノベーションは起こります。
- 顧客にこれまでとは違う価値や満足を生み出す
- あるいは、同じ資源から、これまでとは違う成果が生まれるようにする
藤屋式ニッチトップ戦略では、イノベーションを狭く定義し直しません。
ここで見るのは、そのイノベーションが自社の利益につながる事業になっているかです。
イノベーションが起きても、自社に利益が残らないことがあります。
それでは、その取り組みを続け、次の投資につなげることができません。
新しいことをしたかどうかだけではありません。
その成果を、自社の利益につなげられているか。
このブログでは、そこまでを見ます。
利益にならないとき、どこで止まっているか
新しい取り組みが利益になっていないとき、まず何が変わったのかを確かめます。
一つは、顧客の側に新しい価値や満足が生まれているか。
技術としては新しい。
社内では画期的だと考えている。
しかし、顧客の用途で何かが変わったわけではない。
あるいは、変わったとしても、顧客が必要としている変化ではない。
この場合、新しい技術をさらに高めれば解決するとは限りません。
誰に、どのような新しい満足を生み出すのか。
そこへ戻って考える必要があります。
もう一つは、その成果が自社の利益につながる事業になっているか。
顧客の側では、確かに何かが変わっている。
手間が減った。
品質が安定した。
できなかったことができるようになった。
損失を避けられるようになった。
それでも、自社には十分な利益が残っていない。
この場合、価格だけの問題とは限りません。
- 商品としてのまとめ方が違うのかもしれない
- 提供方法にコストがかかりすぎているのかもしれない
- 価格の設定を間違えているのかもしれない
- 対象とする顧客層&市場が違うのかもしれない
- 価値が伝わっていないのかもしれない
自社の工程や仕事の仕組みを変え、生産性が上がっている場合も同じです。
成果は出ていても、それが事業全体の利益につながるとは限りません。
新しい取り組みによって生まれた成果を、戦略設計の6変数(強み×商品×提供方法×価格×顧客層&市場×メッセージ発信)のどこで利益につなげられていないのか。
そこを確認します。
新しい技術から始めなくてよい
ドラッカーは、イノベーションの機会がどこにあるかについても述べています。
- 予期せぬ成功や失敗
- 現実と認識のずれ
- 工程上のニーズ
- 産業や市場構造の変化
- 人口構造の変化
- 認識の変化
- そして新しい知識
新しい知識は、イノベーションの機会の一つです。
しかも、順番で言えば、最後の七番目の機会です。
もっとも、技術者出身の経営者であれば、新しい技術から考えるのは自然です。
- もっと高い精度
- 新しい材料
- 新しい加工方法
- 新しい設備
ただ、イノベーションを新技術に限定しなければ、新しい技術だけを探す必要はありません。
今ある技術や経験でも、それによって生まれる成果が変われば、イノベーションにつながることがあります。
工程上のニーズも同じです。
誰もが不便だと思いながら、「そういうものだ」と受け入れている手順がある。
そこを変えることで、顧客にこれまでとは違う満足を生み出せるかもしれません。
イノベーションは、新しい技術からしか始まるわけではないのです。
既存の技術を、新しい事業分野につなげた会社
たとえば、滋賀県大津市の日伸工業株式会社。滋賀県大津市の日伸工業小物精密金属プレス加工を行う企業です。
同社は、テレビ用ブラウン管部品を主力として成長してきました。
ブラウン管部品には、精密なプレス成形だけではありません。
傷やバリ、金属粉や加工油の付着を防ぐ高い品質が求められます。
同社は、その要求に応える中で精密プレス加工の技術を磨いてきました。
しかし、薄型テレビの普及によってブラウン管市場は急速に縮小します。
そこで同社は、それまで蓄積してきた精密プレス加工技術を、別の市場へ展開しました。
注目したのが、自動車分野です。
ハイブリッド車や電気自動車などで使われる二次電池やモーター。
これらには、高精度な金属部品が必要になります。
同社は、ブラウン管部品で培った精密プレス技術を生かします。
そして、車載用電池部品やモーター部品などへ事業を広げていきました。
さらに、医療・ヘルスケア、環境・エネルギーなど、新しい分野への展開も進めています。
2023年版中小企業白書は、同社を次のように紹介しています。
「自社のコア技術とマーケットニーズを結び付け、新たな事業分野へのイノベーションを続ける企業」。
また、同白書の調査があります。
ニーズ探索に取り組んでいる中小企業のうち、新事業が利益につながった企業の割合は27.9%。
取り組んでいない企業では13.3%でした。
新しい技術を持つことだけではありません。
それが価値になるニーズを探索することの重要性が示されています。
藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、日伸工業の事例で重要なのは、単に新しい技術を開発したことではありません。
既存事業で蓄積した精密プレス技術という強みを、別の顧客層&市場と組み合わせた。
そこで新しい価値を生み出す事業へ変えていったことです。
自社にとって目新しい技術を持つことと、イノベーションを起こすこと。
この二つは違います。
持っている強みを、どこで生かすのか。
そこからイノベーションが始まることもあります。
(出典:中小企業庁『2023年版中小企業白書』)
モノづくり企業の場合
イノベーションを、商品という一つの変数だけで考えないことです。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
イノベーションが起きる場所は、一つではありません。
強みを別の場所で生かす。
既存の技術や経験を、これまでとは違う用途へ向ける。
同じ強みでも、顧客が変われば生み出す価値が変わります。
- 商品を変える:既存の技術を、新しい商品として組み直す。単品だったものを組み合わせる。顧客が使いやすい形に変える
- 提供方法を変える:同じ商品でも、顧客の流れの中でどこに関わるかを変える。それによって、新しい満足が生まれることがあります
- 顧客層&市場を変える:これまで取引のなかった業界や顧客に向ける。その顧客にとって、これまでなかった解決策になることがあります
- そのうえで、価格と取引条件を見直す:顧客に新しい価値が生まれても、その価値に見合う適性価格と取引条件になっていなければ、自社に利益が残りません
- そして、新しい価値を伝える:顧客の側で何が新しくなったのか。それが顧客の判断材料として認識されていなければ、価格にも反映されにくくなります
自社の工程や仕事の進め方を変える。
同じ資源から生み出す成果を変える。
そこまでを見ます。
ただし、イノベーションが起きたことと、自社に利益が残ることは別です。
その成果を、6変数のどこを組み替えれば自社に残せるのか。
そこまでを見ます。
イノベーションを、利益につながる事業にする
まず、自社にとって新しいだけなのか?
それとも、イノベーションが起きているのか。?
ここを分けます。
イノベーションが起きていても、それだけで自社に利益が残るとは限りません。
- その成果は、どこで生まれているのか
- 顧客に新しい価値や満足を生み出しているのか
- それとも、自社の工程や仕事の仕組みを変えているのか
- その成果を自社の利益につなげるには、事業のどこを組み替えるのか
このようにして戦略設計の6変数を見直します。
目指すのは、新しいことを増やすことではありません。
イノベーションを、自社に必要な利益が残る事業につなげることです。
今、進めている新しい取り組みによって、
- 顧客または自社の側で何が変わっているでしょうか?
- その変化は、自社に必要な利益が残る事業につながっているでしょうか?
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