扱う商品を増やすほど、売上は伸びるのか
売上を伸ばしながら、利益率を上げるニッチトップ戦略の藤屋伸二です。
気づけば、扱う商品が増えている
- 新しい仕様を加える
- 加工できる材質を増やす
- 用途別の商品をつくる
- 新しいモデルを追加する
売上を伸ばそうとすると、こうして扱う商品が増えていくことがあります。
一つひとつは、理由があって増えたものです。
- 顧客から相談があった
- 引き合いに応えた
- 設備を入れたので受け入れる顧客と内容と幅を広げた
その結果、売上につながった商品もあります。
一方で、扱う商品が増えた割に、売上や利益率は思うように伸びない。
現場は忙しくなり、段取り替えや管理する対象だけが増えている。
そんな会社もあります。
では、扱う商品を増やすほど、売上を伸ばしながら、利益率を上げるを実現できるのでしょうか。
商品を増やせば、売上機会は増える
商品を増やせば、顧客との接点は増えます。
- これまで断っていた引き合いに応える
- 既存顧客から別の商品も受注する
- 新しい用途の顧客との接点をつくる
売上機会が増えることは確かです。
しかし、売上機会が増えること。
実際に売上が伸びること。この二つは同じではありません。
商品が増えると、同時に事業の中で増えるものがあります。
- 段取り替え
- 材料や在庫。
- 面や仕様の管理
- 検査項目
- 営業が説明する内容
- 少量受注への手間
もちろん、商品を増やしても既存設備や材料を共用できる場合があります。
その場合は、追加負担がほとんど増えません。
反対に、一つの商品を加えただけで、別の材料、別の工程、別の検査、別の売り方が必要になることもあります。
つまり、商品数と売上、そして利益には単純な比例関係はないのです。
増えた商品は、事業の中で何をしているか
商品が増えていく過程を見ると、顧客からの相談がきっかけになっていることがあります。
- 既存の設備と技術で多様な要望に応えることができる
- だから、多様な要望を受け入れる
- 仕事が続き、一つの商品として定着する
一件ずつを見れば、合理的な判断です。
ただ、その積み重ねでできた商品構成が、目指す事業と合っているか。
それは別の問題です。
- 顧客層が違う
- 求められる提供方法が違う
- 価格の決まり方も違う
自社の強みが大きな価値になる商品もあれば、それほど生きていない商品もある。
すると、一つの会社の中に、性質の違う組み合わせが並びます。
人、設備、時間も、それぞれの商品に割かれます。
一方で、商品が増えることによって、事業全体の価値が高まる場合もあります。
違いを決めるのは、商品が増えた経緯ではありません。
増えた商品が、目指す事業の中でどのような役割を持っているかです。
ドラッカーは、集中をどう考えたか
ドラッカーは、成果を上げるためには集中が必要だと繰り返し述べています。
限られた経営資源を、成果につながる領域に向ける。
一見すると、多くの商品を扱うことと集中することは反対に見えます。
しかし、複数の商品が同じ強みを生かしているとします。
同じ対象市場で、共通する顧客価値を生み出している。
それなら、商品数が増えても経営資源は分散しているとは限りません。
反対に、商品数が少ない場合もあります。
それぞれが異なる顧客、異なる提供方法、異なる設備や技術を必要とする。
それなら、経営資源は分散します。
だから、集中しているかどうかを、商品数だけで判断することはできません。
見るのは、経営資源がどこに向かっているかです。
扱う商品を増やすことが悪いわけではない
商品が増えることで、事業が強くなることがあります。
- 単品ではなく、複数の商品を組み合わせて提供できるようになる
- 顧客が複数の会社へ発注していたものを、一社でまとめて頼めるようになる
- 既存の強みを別の商品にも生かすことで、同じ対象市場に提供できる価値が広がる
こうした商品追加なら、商品数が増えることによって事業全体の整合が高まる可能性があります。
反対に、自社で計画して追加した商品であっても、他の変数と噛み合っていなければ、事業を複雑にすることがあります。
顧客の引き合いから生まれた商品でも、目指す事業と整合し、自社の強みを生かして顧客に価値を生み出す。
それなら、事業を強くする商品になり得ます。
扱う商品は、起点ではなく、目指す事業との整合で判断します。
多品種化して、事業を強くした会社もある
たとえば、栃木県小山市の髙木商店。
ビーチボールや浮き輪などの空気入りビニール製品を製造する企業です。
同社はかつて量産品を主に手掛けていました。
しかし、生産拠点の海外移転や安価な海外製品の流入によって受注が減少します。
1980年代後半から、多品種小ロットの複雑な製品や、特注品、一品物の受注を増やしていきました。
その結果、商品は増えました。
しかし、単に「何でも扱う会社」になったわけではありません。
多様な注文に応える過程で、複雑な形状への溶着、印刷、再現といった技術を蓄積しました。
その技術から、壊れにくさと見た目の美しさを追求した競技用ビーチボール。
直径70センチのボールに国名や地形図を精緻に印刷した地球儀。
こうした難易度の高い商品を生み出しています。
販売先も数社の固定客中心から数十社へ広がりました。
白書によると、低価格ではなく品質や独自性を売りにすることで、新規案件では「適正な価格」で受注できるようになりました。
売上高も、1980年頃の国内生産最盛期と比べて1.2倍まで増加しています。
藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、この事例で重要なのは、商品数が増えたこと自体ではありません。
多品種小ロットや特注品に応える中で技術を蓄積した。
その強みを生かした商品を増やし、 販売先や価格のあり方まで変わっていった。
(出典:中小企業庁『2020年版中小企業白書』)
モノづくり企業の場合
見るのは、商品の数ではありません。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
商品を追加するとき、その商品だけを見るのではありません。
他の変数との組み合わせを見ます。
◆その商品で、自社の強みが顧客価値につながっているか。
既存の強みが生きる商品なのか。
それとも、その商品のために別の経営資源を新たに必要とするのか。
◆提供方法と整合しているか。
既存の商品と同じ設備、受注方法、納品方法で応えるのか。
それとも、その商品のためだけに別の仕組みが必要になるのか。
◆価格は、生み出している価値に見合っているか。
少量の特殊品を、量産品と同じ考え方で価格設定する。
それでは、売上が増えても利益につながらないことがあります。
◆対象とする顧客層&市場と合っているか。
商品を増やすことで、新しい顧客層&市場が加わる場合があります。
その顧客は、目指す事業で対象とする顧客なのか。
◆メッセージ発信は、対象とする顧客層&市場に届いているか。
商品と提供方法が魅力的に伝わる内容になっているか。
メッセージ発信の媒体、タイミングは顧客層&市場に適しているか。
その商品を加えた6変数全体が、目指す事業と整合するかどうかで判断します。
そして、すでに扱っている商品の中に整合していないものが見つかったとします。
それでも、すぐに切るという意味ではありません。
現在の売上を支えている商品であれば、 条件を決めて計画的に縮小・廃棄への移行を設計することになります。
問うのは、扱う商品数ではない
商品を増やせば、顧客との接点や売上機会は増えます。
しかし、それだけで売上や利益が伸びるとは限りません。
問うのは、その商品を加えることで、6変数の整合が高まるかどうか。
そして、目指す事業に近づくかどうかです。
今、扱っている商品は、どういう経緯で増えてきたでしょうか。
その中に、目指す事業での役割を説明できない商品は、あるでしょうか。
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