その「高品質」は、顧客が求めている品質か

売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。

品質には、自信がある

寸法精度は同業他社より厳しく管理しています。
検査基準も高く設定しています。
不良率も低い。
クレームもほとんどありません。

会社案内にも、商談でも、そのことを説明しています。
数値も示しています。

それでも、その品質が価格や取引条件を決める理由にはなっていません。
相見積もりには入りますし、単価の話にもなります。

なぜ、品質が決める理由にならないのでしょうか。

「高品質」は、誰の物差しか

技術や設備の説明は、たいてい伝わっています。
顧客も、この会社の精度が高いことは分かっています。

伝わっていないのは、品質の情報ではないかもしれません。

「高品質」という言葉には、評価が含まれています。
高いか低いかを判断するには、物差しが要ります。
そして、その物差しを持っているのは、自社と顧客の両方です。

たとえば、
自社は、寸法精度、耐久性、不良率、検査の厳しさなどを基準にしています。
長年、そこを磨いてきました。

一方の顧客も、品質という言葉を使います。
ただ、顧客が重視しているものは、自社と同じとは限りません。

問題は、高品質が伝わっていないことではないかもしれません。
自社が高品質と考えているものが、顧客の重視する価値と一致していないのかもしれません。

顧客が重視している価値は、どこにあるか

品質というと、精度、耐久性、不良率、ばらつきの小ささ。
こうした、商品そのものに関わる物理的価値を思い浮かべやすいものです。
しかし、顧客が重視している価値は、それだけとは限りません。

不良や手戻りが減る。
検査や調整の工数が減る。
在庫や停止による損失を抑えられる。
これは経済的価値です。

品質について心配する必要がない。
重要な案件でも安心して任せられる。
これは心理的価値です。

どれが上ということではありません。
自社が高品質と考えているものと、特定顧客が重視している価値。
この二つが一致しているかを見るための分類です。

たとえば、±1μmまで加工できるとします。
しかし、顧客の用途が±10μmで足りるなら、その精度差は顧客の判断材料になりにくい。

一方、必要な精度を毎回安定して満たすこと。
バラツキが小さいこと。
そのほうが、その顧客には重要かもしれません。

自社にとっては、±1μmを実現できることが高品質。
顧客にとっては、必要な品質が毎回安定して得られることが重要。

同じ品質の話をしていても、見ているものが違います。
だから、品質の高さを説明しても、顧客の判断が変わらないことがあります。

ドラッカーは、品質をどう考えたか

ドラッカーは、事業を商品からではなく、顧客から見ることを求めました。
そして品質とは、供給する側が商品に入れたものではない、顧客が得るもの、顧客が対価を払うものである、と述べています。

自社が高い品質を実現していること。
その品質を顧客が高い価値として認めること。
この二つは、同じではありません。

だから問うべきは、「うちの品質は高いか」だけではありません。
この顧客は、何を価値ある品質として見ているのか。
そしてドラッカーは、もう一つ問いを置いています。

われわれの顧客は誰か。

ここが重要です。
顧客によって、重視する価値は違うからです。

  • ある顧客は、極端な精度を重視する
  • 別の顧客は、品質の安定性を重視する
  • また別の顧客は、不良や手戻りが起きないことを重視するかもしれない

すべての顧客の基準に合わせることはできません。
誰を対象とするかによって、自社が何を品質として磨くのかも変わります。

要求された仕様と、価値ある品質は同じではない

ここで注意が要ります。
顧客が重視する品質を確認する。
それは、指定された仕様をそのまま品質の基準として受け取ることではありません。

顧客が要求している仕様と、その顧客にとって価値ある品質。
この二つは、同じとは限りません。

  • 慣行で決まっている検査項目もある
  • 前任者から引き継いだ仕様もある

仕様を満たしたことが、そのまま価値ある品質を実現したことにはなりません。
だから確認するのは、指定された仕様の中身だけではありません。

目指す事業において対象とする顧客が、何を価値ある品質として重視しているのかです。
ここまで戻したうえで、自社の品質基準と照らし合わせることになります。

高品質でも、それだけでは違いにならないことがある

この問題は、個々の企業だけの話ではありません。
2020年版中小企業白書では、製造業について比較をしています。
価格転嫁ができた企業とできなかった企業で、何が違うのか。
そこで興味深い結果が出ています。

製造業で一般に重視される「品質」や「供給力」。
これらは、価格転嫁ができた企業とできなかった企業との差が比較的小さかった。

白書は、品質・コスト・供給力といったQCDが、すでに取引の前提条件になっている可能性を指摘しています。

一方、両者の差が最も大きかったのは「提案力・企画力」。
次いで「商品の機能・サービスの独自性」「アフターサービス」でした。

これは、「高品質に意味がない」ということではありません。
むしろ逆です。

高い品質は、取引に必要な重要な価値です。

しかし、顧客がそれを「満たしていて当然の条件」と見ているとします。
その場合、品質をさらに高めても、それだけでは価格や取引先を判断する基準の違いになりにくい。

  • 自社が高品質だと考えていること
  • その品質が顧客の判断を変える価値になっていること
  • この二つは、別です

(出典:中小企業庁『2020年版中小企業白書』)

モノづくり企業の場合

自社の品質と、顧客が重視する価値。
この二つを並べて見ます。

自社が「高品質」と呼んでいるもの。
「品質がいい」ではなく、何を基準にそう言っているのか。

  • 精度なのか
  • 不良率なのか
  • ばらつきの小ささなのか
  • 検査の厳しさなのか
  • 材料なのか

ここでは、自社の品質を否定する必要はありません。

対象とする顧客が重視する価値。
顧客の言葉をそのまま受け取るだけではありません。
その顧客の事業で何が起きているかを見ます。

  • 不良が出たときに何が困るのか
  • 品質がばらつくと何が起きるのか
  • 検査にどれくらい手間をかけているのか
  • 安定した品質によって何を維持できているのか

自社の品質と、顧客が重視する価値の一致。

自社が磨いてきた品質と、対象とする顧客が重視する価値が一致しているか。
一致しているのに顧客の判断材料になっていない。
それなら、伝え方を見直す余地があります。
一致していないなら、伝え方より先に見直すものがあります。

  • 誰に向けるのか
  • 何を価値として提供するのか

目指す事業との整合。

  • 顧客の基準に自社を合わせるのか
  • それとも、自社の品質基準が大きな価値になる顧客層&市場に向けるのか
  • あるいは、商品や提供方法を組み替えて、自社の強みを別の価値にするのか

ここで戦略設計の6変数につながります。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。

強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信

品質の問題を、メッセージ発信だけの問題にしないことです。

自社の精度が大きな価値になる顧客へ向けるなら、顧客層&市場が変わります。
顧客が重視しているのが品質の安定性なら、それを実現する強みや提供方法を見る必要があります。

生み出している価値が変われば、価格の考え方も変わります。

御社の品質は、誰にとっての品質か

高品質なのに、それが価格や取引条件を決める理由になっていない。
そのとき、伝え方を変えることが答えとは限りません。

先に確認したいことがあります。
御社が高品質と考えているものと、目指す事業で対象とする顧客が重視する価値。
この二つが一致しているかどうかです。

御社が「高品質」と呼んでいるものは、何を基準にした品質でしょうか。
その品質は、目指す事業で対象とする顧客が重視する価値と一致しているでしょうか。

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