新規開拓では、どんな顧客を狙えばいいのか

売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。

どこを狙えばいいのか、決まらない

新規を増やしたい、とは思っています。

今の取引先だけでは、この先どうなるか分からない。
数社への依存も気になる。
展示会にも出ている。
ただ、どこを狙うかとなると、はっきりしません。

同業他社が伸びている分野を見る。
引き合いのあった業界を追う。
展示会で名刺交換をした先に連絡してみる。

具体的に動いてはいます。
ただ、狙いを定めているというより、可能性のありそうな先を順に当たっている感じです。
そもそも、どんな顧客を狙えばいいのか。

今の顧客は、どうやって決まったのか

狙う先を考える前に、確認しておきたいことがあります。
今の顧客は、どういう経緯で顧客になったのか。

多くの場合、こうです。
紹介があった。
引き合いが来た。
断る理由がないので受けた。
仕事が続いた。
次の依頼が来た。

一件ずつは、そのつど正しい判断です。
目の前に仕事があり、引き受けられる。
受けない理由がありません。
しかし、その積み重ねが今の顧客構成です。

意図して選んだというより、応じてきた結果。

そうして今の顧客構成ができている場合があります。
そして、この構成が長く続くと、それが前提になります。
うちの顧客はこういう業界だ、この規模だ、この単価帯だ。

最初からその基準で選んだのではありません。
結果として残った姿です。

新規開拓で狙う先を考えるとき、多くはこの延長線上で探します。
似た業界、似た規模、似た仕事。
それが目指す事業に合っていれば、問題はありません。

しかし、今の顧客構成を前提にして、似た顧客を探し続ける。
それでは、今と同じ顧客構成や取引条件を再生産する可能性があります。

新規顧客は増えても、事業の姿は変わらない。
だから、新規開拓では「どこに売れそうか」を探す前に、どんな顧客を対象とするのかを考える必要があります。

売れそうな先から考えると、決まらない

「どこを狙うか」を、市場の側から探す方法があります。
伸びている業界はどこか。
参入余地はあるか。
競合は少ないか。
これは調べる価値のある情報です。

ただし、市場が伸びていること。
その市場が自社の目指す事業に合っていること。
この二つは別です。

市場として魅力があっても、自社の強みが生きないかもしれない。
求められる提供方法が自社に合わないかもしれない。
価格や取引条件が、目指す事業と合わないこともあります。

逆に、自社の強みから考える方法もあります。

うちの技術を評価してくれるのはどこか。
この加工を必要としているのは誰か。
こちらも必要な視点です。

ただし、これだけでも決まりません。
同じ技術を必要とする顧客でも、その技術が生み出す価値は違います。
顧客によって、求める商品も提供方法も違うからです。
価値を認めるところも違います。

市場から探すことも、強みから考えることも必要です。
しかし、どちらか一つを起点にしても、狙う顧客は決まりません。

ドラッカーは、顧客をどう考えたか

ドラッカーは、事業を考えるときに「われわれの顧客は誰か」と問いました。

この問いは、次の問いと切り離せません。

  • われわれの事業は何か
  • 顧客にとっての価値は何か
  • どのような事業を目指すのか。その事業では、顧客はどこにいるのか。

この三つを行き来しながら、事業を具体化していきます。

だから、「われわれの顧客は誰か」という問いは、現在取引している顧客を確認するだけの問いではありません。
これから、誰を顧客とするのかを考える問いでもあります。

そして、誰を顧客とするかを決めること。
そこには、誰を顧客としないかという判断も含まれます。

すべての引き合いに応じることと、目指す事業に合う顧客を選ぶこと。
この二つは、同じではありません。

モノづくり企業の場合

新規開拓で狙う顧客を決めるとき、行き来しながら具体化するものがあります。

目指す事業と、対象とする顧客を行き来する。

事業を構成しているのは、戦略設計の6変数です。

強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信

どのような事業を目指すのかを考えるとき、顧客層&市場も最初から6変数の一つに入っています。
顧客を除いて事業を先に完成させ、その後で売り先を探すわけではありません。

誰を顧客とするのかを考えれば、商品や提供方法も変わることがあります。
商品や提供方法を考えれば、それが大きな価値になる顧客も具体的になります。

特定顧客に生み出す価値を具体化する。

自社の強みを、どのような顧客に向ければ価値になるのか。
その商品や提供方法によって、顧客の側で何が変わるのか。
何が省けるのか。
何が可能になるのか。

6変数の組み合わせと、特定顧客にとっての価値を往復しながら考えます。

対象とする顧客層&市場を具体化する。

同じ技術を必要とする企業が100社あったとします。
その100社すべてを対象にする必要はありません。

自社の強みが、より大きな価値になる顧客。
自社の提供方法が生きる顧客。
その価値に見合う適性価格で取引できる顧客。

こうした顧客を考えることで、対象とする顧客層&市場が具体的になります。
そして、対象とする顧客層&市場が具体的になれば、目指す事業や他の変数も、さらに具体的になります。

対象が具体化したら、実際の顧客を探す。

ここからは、新規開拓活動の話です。
どの業界を見るのか。
どの企業に接触するのか。
どの展示会に出るのか。

対象とする顧客の基準が具体化されているから、探す場所を選べます。

狙う先を決める前に、目指す事業を具体化した会社

たとえば、横浜市の大川印刷。
価格による比較が起きやすい印刷業界にあります。

同社は2004年から、自社を「ソーシャルプリンティングカンパニー」と位置づけました。
そして、環境や社会課題の解決につながる印刷に取り組んできました。

さらにSDGsを経営計画の中核に据えます。
CO₂排出量を相殺する「ゼロカーボンプリント」。再生可能エネルギーを使った印刷。
こうして、自社が目指す事業を具体化していきました。

すると、その価値に関心を持つ大企業や外資系企業から、問い合わせが入るようになります。

中小企業白書によると、新規開拓営業をほとんど行っていません。
それでも直近3年間で175件の新規顧客を獲得し、新規売上は約5,000万円増加しました。

大川印刷が、最初から「大企業や外資系企業を狙う」と決めていたわけではありません。

藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、こう捉えられます。
自社がどのような事業を目指し、どのような価値を生み出すのかを具体化した。
その結果、その価値を必要とする顧客との接点が生まれた。

新規顧客との接点は、自社から探しに行く場合もあります。
一方で、相手から生まれる場合もあります。

(出典:中小企業庁『2020年版中小企業白書』)

そして、対象とする顧客層&市場が具体化すると、今の顧客構成の見え方も変わります。

目指す事業に合っている取引と、そうでない取引が見えてくる。
ただし、合っていないからといって、すぐに切るという意味ではありません。
現在の事業から目指す事業へどう移るか。それは、移行の設計になります。

新規顧客を探す前に、どんな顧客を対象にするかを決める

新規開拓で狙う先が決まらないのは、情報が足りないからとは限りません。
売れそうな市場を探す。
自社の技術を必要とする企業を探す。
どちらも必要です。

しかし、その前に必要なことがあります。
どんな事業を目指し、その事業では誰に、 どのような価値を生み出すのかを具体化することです。
それが決まれば、探す対象が変わります。

今、自社が目指す事業と、対象とする顧客を、結びつけて具体化しているでしょうか。
その顧客に、どのような価値を生み出すのかを決めているでしょうか。

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