値上げすると顧客は離れるのか
売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。
価格を上げたい。しかし、すぐには言い出せない
材料費は上がっている。
人件費も上がった。
電気代も、外注費も。
原価計算をすれば、今の単価では合わないことは分かっています。
それでも、値上げの話を切り出すのは簡単ではありません。
長い付き合いの取引先です。
もしかしたら、相談した途端に、別の会社を探されるかもしれない。
そうすると、その一社が抜ければ、売上が下がる。
だから、しばらく様子を見ている。
値上げをすれば、本当に顧客は離れるのか。
離れる顧客と、離れない顧客がいる
値上げを相談したとき、反応は分かれます。
すぐに他社を探し始める顧客がいます。
一方で、事情を聞いたうえで受け入れる顧客もいます。
同じ会社が、同じ幅の値上げを相談しても、相手によって結果が変わります。
この違いは、顧客の性格や関係の長さだけで決まるわけではありません。
顧客が、その取引を何と比べているかによって変わります。
自社の商品が他社のものと入れ替えられる。
それなら、顧客が入れ替えを検討するのは自然です。
一方、取引先を入れ替えれば、顧客の側にも影響が生じます。
設計を変える必要が出る。
歩留まりが変わる。
急な仕様変更への対応が変わる。
新たな調整や確認が必要になる。
こうした影響まで含めて考えれば、単価だけでは判断できなくなります。
つまり、値上げをしたときの顧客の判断は、値上げ幅だけでは読めません。
自社との取引によって、顧客にどのような価値が生まれているか。
そこを見る必要があります。
顧客にとって、価格とは何か
顧客の側から見ると、自社に支払う金額は、事業に必要なコストの一部です。
購入単価が上がっても、顧客の側でそれを上回る経済的価値が生まれることがあります。
不良の手直しが減る。
在庫を減らせる。
設計の手戻りが減る。
突発的な変更に応じることで、生産計画を組み直さずに済む。
こうした部分は、購入単価の欄には出てきません。
しかし、顧客の事業には影響しています。
そして、価値は金額で測れるものだけではありません。
安定して使える。
急な変更にも応じてもらえる。
担当者が安心して任せられる。
こうしたことも、顧客にとっての価値です。
だから、値上げの相談が受け入れられるかどうか。
これを単価だけで考えることはできません。
問うべきなのは、その取引によって、顧客の側に何が生まれているのかです。
そして、その価値を顧客自身が認識しているか。
認識されていなければ、顧客は目に見える価格を中心に判断します。
それは顧客にとって自然な判断です。
二種類の値上げ
ここで、性格の違う二つの値上げを分けておきます。
一つは、原価の上昇を反映する値上げです。
材料費が上がった。
人件費が上がった。
エネルギー価格が上がった。
同業他社にも同じようなコスト上昇が起きているとします。
その場合、市場全体の価格水準が動くことがあります。
その中で、原価上昇分を価格に反映する。
これは必要な値上げです。
もう一つは、提供している価値に見合う価格へ近づける値上げです。
顧客にどのような価値を生み出しているのかを確認する。
そのうえで、その価値を踏まえて価格を見直す。
いま検討している値上げが、どちらなのか。
顧客への説明も、そこで変わります。
ドラッカーは、顧客と価値をどう考えたか
ドラッカーは、事業を商品からではなく、顧客から見ることを求めました。
自社が何を売っているかだけではありません。
顧客が何を価値としているかを問います。
だから、次の問いが重要になります。
「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」。
ただし、ここでいう顧客とは、現在取引している顧客をそのまま前提にするという意味ではありません。
「われわれの顧客は誰か」と問うこと自体が、誰を顧客とするのかを問い直すことだからです。
藤屋式ニッチトップ戦略では、目指す事業を定めます。
そして、その事業に合う顧客層&市場を選びます。
そして、その特定顧客に貢献し、顧客にとっての価値を生み出す。
その見返りとして、自社にとっての価値が生まれます。
ドラッカーは、利益を顧客への貢献の見返りとして捉えました。
順序は、利益が先ではありません。
まず、特定顧客にどのような貢献をするのか。
その結果として、顧客に価値が生まれる。
その見返りとして、自社にも価値が生まれます。
モノづくり企業の場合
値上げを、価格という一つの変数だけの操作にしないことです。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
価格だけを動かして、他の変数との組み合わせが以前のまま。
それなら、顧客から見て変わったのは金額だけ、ということもあります。
したがって、見るのは値上げ幅だけではありません。
自社との取引によって、顧客の側で何が省けているか。
何が起きずに済んでいるか。
そして、その価値を顧客が認識しているか。
ここが顧客によって違えば、同じ値上げ幅でも反応は変わります。
それでも、値上げを受け入れない顧客はいます。
そこで初めて、価格だけではなく、顧客層&市場を含めた他の変数を見直すことになります。
その顧客は、目指す事業において対象とする顧客なのか。
その顧客にとって、自社の強みは価値になっているのか。
商品や提供方法を変えれば、より大きな価値を生み出せるのか。
あるいは、その価値をより高く認める別の顧客層&市場があるのか。
値上げの問題が、6変数の組み替えの問題に変わります。
参考となる市場価格がない領域で、案件ごとに決める
たとえば、福島県会津若松市のマコト精機。
金属の鋼板を連続して成形する「冷間ロール成形機」を主力とするメーカーです。
従来、ロール成形機は量産向けとされていました。
しかし、顧客ニーズが大量生産から多品種・小ロットへ変化します。
その中で同社は、小ロット生産が可能なロール成形機の開発に注力しました。
その結果、白書掲載時点で国内トップシェアを持つまでになっています。
価格の決め方にも特徴があります。
同社の商品は、一回の注文ごとに販売価格を設定しています。
競合企業が少なく、参考となる市場価格もないためです。
一方で、採算を外さないよう、長年蓄積した原価管理資料を見積もりに活用しています。
これは、現在の顧客に値上げを受け入れてもらった事例ではありません。
藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、こう捉えられます。
多品種・小ロットという顧客ニーズに応える商品を開発した。
そして、競合が少なく参考となる市場価格もない領域で、案件ごとに価格を設定している。
この事例から見えるのは、現在の顧客に値上げを受け入れてもらうことだけが選択肢ではない、ということです。
(出典:中小企業庁『2020年版中小企業白書』)
顧客は何に対して支払っているのか
値上げをすれば顧客が離れるかどうかは、相手によって違います。
値上げは、価格という変数だけを変える作業ではありません。
まず確認するのは、自社との取引によって、顧客にどのような価値が生まれているか。
そして、その価値が顧客に認識されているかです。
それでも受け入れられない場合は、価格だけを動かし続けません。
商品、提供方法、顧客層&市場など、他の変数との組み合わせを見直すことになります。
誰を顧客とするのか。
その顧客は、何に価値を認めるのか。
この二つを切り離さずに考える。
それが、価格と取引条件の主導権を持つための出発点になります。
自社との取引によって、顧客の側にどのような価値が生まれているでしょうか。
その価値を認める顧客を、これからも対象とすると決めているでしょうか。
藤屋式ニッチトップ戦略を御社に当てはめる
藤屋式ニッチトップ戦略塾では、
戦略設計の6変数を実際に御社に当てはめ、
どこをどう組み替えるかの設計を支援します。1クール6回、各回のテーマは独立しているため、いつからでも参加できます。
体験参加 30,000円(税込33,000円)の詳細とお申し込みはこちらです。
藤屋式ニッチトップ戦略|設計プロジェクトでは、
藤屋式ニッチトップ戦略塾で行うことを、
超短期間(2日間+後日の3時間)で個別に設計します。
詳細とお申し込みはこちらです。
まずは記事で考えたいという方は、
無料メルマガをご登録ください。
ご登録はこちらです。


