差別化したのに、なぜ他社と比較されるのか

売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。

違いはつくった。それでも、他社と比べられる

  • 他社にはない設備を入れた
  • 手がける領域を広げた
  • 自社にしかできない工程を確立した
  • 社内では、違いをつくったつもりでいる
  • 展示会でも、その点を説明している
  • それでも、引き合いが来れば相見積もりに入る
  • 価格の相談が来る。納期を詰められる

違いをつくったはずなのに、なぜ他社と同じ物差しで比べられるのか。

差別化しても、なぜ比較は続くのか

他社との違いをつくることを、一般に差別化と呼びます。

  • 性能を上げる
  • サービスを足す
  • 提供できる範囲を広げる

どれも違いをつくる行為です。

ただ、違いをつくることと、他社と比べる意味が薄れることは、同じではありません。

顧客が3社を並べたとします。
「A社はこの性能、B社はこの性能、C社はこの性能」。
違いはある。
しかし、その違いを同じ基準で測れるなら、比較できます。

藤屋式ニッチトップ戦略では、独自化を、単に違いを大きくすることとは考えません。

強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信

この戦略設計の6変数の組み合わせの内容によって、他社と同じ物差しで比べる意味が薄れる状態に近づけていきます。

商品そのものは他社と同じでも、独自化できることがあります。
提供方法や顧客層&市場との組み合わせによって変わるからです。

逆に、一つの商品に大きな違いがあっても、比較され続けることがあります。
他の変数との組み合わせの内容が変わっていなければ、そうなります。

だから、「独自化したつもりなのに比較される」。
この状態は、矛盾ではありません。

原因は、大きく二つに分けて考えられます。

原因の一つ目 事業の実態が、まだ比較できる状態にある

戦略設計の6変数の内容のうち、一つを変えたとします。
しかし、他の変数の内容との組み合わせが変わらなければ、顧客から見た事業の輪郭は大きく変わりません。

たとえば、商品に他社にない機能を足したとします。
しかし、売り先も同じ。
提供の仕方も同じ。
価格の決め方も同じ。

それなら顧客は、その機能を「同じ商品の上乗せ部分」として見るかもしれません。

一つひとつの変数に、他社にない独自性が要るわけではありません。
重要なのは組み合わせの内容です。

原因の二つ目 実態は変わったが、顧客の認識が変わっていない

もう一つは、逆の場合です。

強み、商品、提供方法、価格、顧客層&市場。
その組み合わせの内容は、すでに他社とは違うものになっている。
他社が対応したがらない、あるいは対応できないニーズにも応えている。

それでも、顧客がその違いを判断材料として認識していなければ、比較の仕方は変わりません。

顧客は、御社が知っていることを知りません。

  • 工程の中で何をしているか
  • なぜその納期が可能なのか
  • どこで手間をかけているのか
  • それが顧客に伝わらなければ、判断材料には入りにくい

そして、問題は伝える量だけではありません。
「高精度」「多品種対応」「一貫生産」。
これらは、御社が何を持っているかを伝える言葉です。
しかし顧客が知りたいのは、それによって顧客自身に何が起きるかです。

  • 歩留まりが上がる
  • 在庫を減らせる
  • 設計の手戻りが減る
  • 突発的な仕様変更に対応しやすくなる

同じ事実でも、顧客にとっての価値として伝わらなければ、判断材料になりません。

そこで、戦略設計の6変数を2つに分けて考えると、分かりやすくなります。

ここでは、強み・商品・提供方法・価格・顧客層&市場を事業の実態の側として見ます。
メッセージ発信を、顧客の認識の側として見ます。

これは、新しい変数を加えるという意味ではありません。
価格や提供方法も、顧客の受け取り方に影響します。
実態と認識のどちらに原因があるかを見分けるために、あえて分けています。

独自化が成果につながるには、二つが要ります。
事業の実態として、違いが成立していること。
その違いが、顧客に価値として認識されること。

初期価格だけでは見えない違い

たとえば、広島県尾道市の山本製作所は、業務用洗濯機を製造する企業です。

同社は、機械と設置費用を合わせた導入時のコストで、安さを競っていません。
導入してから使い続ける間の、ライフタイムコストで見たモノづくりに力を入れてきました。
山本社長は、次のように述べています。

価格が自社製品より安くても、10年しかもたない製品がある。
それに対し、自社は30年使い続けられる製品をつくることに力を入れている。
メンテナンスと部品の供給も、それに見合う体制を整えているとしています。

10年で買い替える製品を3回入れ替える。
1台を30年使い続ける。
この二つでは、負担する費用が変わります。

そして、機械の頑丈さと保守の細やかさから、同社の製品は海外で「Forever Machine」と評価されているとしています。
ここで見たいのは、耐久性が高いことだけではありません。
長く使えること、部品を供給し続けられることは、事業の実態です。
しかし、顧客が購入時の価格だけで比べていれば、その違いは「高い製品と安い製品」という比較に埋もれます。

同社が示しているのは、購入時の価格だけで見ない、という考え方です。
使い続ける間にかかる費用まで含めて見る。

藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、商品に新しい特徴を足した事例ではありません。
すでにある頑丈さや部品供給の体制が、顧客にとってどのような価値になるのか。
それを、別の物差しで示した事例と捉えられます。

もちろん、この事例から、山本製作所が他社と比べられなくなったとまでは言えません。
確認できるのは、購入時の価格だけでは不利になり得る製品について、別の物差しを示していることです。

(出典:経済産業省 METI Journal ONLINE「【広島発】業務用洗濯機を中心に「MADE IN ONOMICHI」を世界へ」)

ドラッカーは、違いをどう考えたか

ドラッカーは、次のように述べています。

企業が売っていると考えているものを、顧客が買っていることは稀である。

顧客が買っているのは製品ではなく、満足だからです。

自社が違いだと考えているものと、顧客がその会社を選ぶ理由。
この二つは、一致するとは限りません。
自社が考える違いを高めても、それだけで顧客の判断が変わるとは限りません。

だから、違いをつくったかどうかだけでは、顧客の判断が変わるかどうかは決まりません。
その違いによって、顧客の側で何が変わるのか。
そこまで見なければ、顧客にとっての価値は分かりません。

この見方は、ドラッカーの問いにもつながります。
「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」。

藤屋式ニッチトップ戦略では、強みだけを単独で磨きません。
6変数を組み合わせ、特定顧客にとって、他社と同じ物差しで比べる意味が薄れる事業を設計します。

その違いを顧客の判断材料にするところまでが、設計に含まれます。
だから、メッセージ発信も戦略設計の6変数の1つです。

モノづくり企業の場合

では、御社はどちらなのか。

手がかりは、顧客が価格以外の理由を示しているかどうかです。

  • おたくは高いけれど、あの件では助かった
  • 今回は納期の面でお願いしたい

こうした言葉は分かりやすい材料です。
ただし、顧客が価値を認めていても、それを言葉にするとは限りません。

言葉だけでなく、行動も重要な手がかりです。

  • 他社より高くても発注が来る
  • 設計段階から相談が来る
  • 困難な案件を指名で持ち込まれる
  • 相見積もりを求められなくなる。

こうした反応があるなら、顧客は御社の違いを判断材料として認識している可能性が高い。
この場合、見直すのは違いの有無ではなく、その価値を成果につなげる側です。
提供方法か、価格の設計か、伝え方か。
どこに詰まっているかは会社によって違います。

一方、やり取りが仕様、価格、納期に終始している。
発注の仕方にも、御社を選ぶ特有の理由が見えない。

それなら、御社が考えている違いは、顧客の判断材料に入っていません。
この場合、伝え方だけを変えても、顧客の判断は変わりにくい。
伝えるべき価値そのものを、実態の側から見直すことになります。

ただし、これは目安です。
顧客が言葉にしないだけで、内心では評価していることもあります。

逆に、口では高く評価しながら、発注では価格を重視していることもあります。
そして、どちらの原因であっても、御社に打てる手があります。

顧客が何を価値と認めるかを、御社だけで決めることはできません。
しかし、何を価値として提案するか。
何を判断材料として認識してもらうか。
これは、御社で設計できます。

  • 事業の実態を組み替えるのか
  • その実態を価値として伝える方法を変えるのか
  • あるいは、その両方なのか

どこから手をつけるかは、会社によって違います。

違いをつくることと、比べる意味が薄れること

違いをつくっただけでは、比較は終わりません。
その違いが特定顧客にとって価値になるように、戦略設計の6変数が組み合わされる。
さらに、その価値が顧客の判断材料として認識される。
そこまで進むことで、他社と同じ物差しで比べる意味が薄れていきます。

実態を見直すのか、伝え方を見直すのか。
どちらであっても、別々に判断するのではありません。
戦略設計の6変数全体の整合を見ながら、どこを、どの順序で組み替えるかを決めることになります。

今、御社がつくった違いは、顧客にとって価値になっているでしょうか。
その価値は、顧客の判断材料になっているでしょうか。

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