技術力の高さを、売上につなげるには何が必要か
売上を伸ばしながら、利益率を上げる ニッチトップ戦略の藤屋伸二です。
技術力は、選ばれる理由になっているか
- 自社の技術力に、自信がある
- 同業他社にはできない加工ができる
- 品質でクレームを受けたことはほとんどない
- 長年の取引先からは、腕を評価されている
- それでも、売上は思うように伸びない
- 利益率も、技術力に見合っているとは言いにくい
- 数字だけ見れば、悪くはない
- 仕事も切れていない
- ただ、自社の技術力を考えれば、この数字が妥当だとも思えない
御社の技術力の違いは、価格と取引条件に反映されているでしょうか。
- 見積もりを出すとき
- 新規の引き合いに応じるとき
- 値上げを相談するとき
そこで御社の技術力は、どれくらい効いているでしょうか。
技術力は、評価される。しかし価格と取引条件は据え置かれる
技術力の高さが、まったく効いていないわけではありません。
- 難しい案件が回ってくる
- 他社が断った仕事が来る
- 「おたくなら何とかしてくれる」と言われる
これらは、技術力の違いが選ばれる理由になっていることを示しています。
問題は、その先です。
- 選ばれても、価格は他社との技術力の差ほどは変わらない
- 取引条件も変わらない
- 難易度が上がったぶんの手間は増えているのに、単価には適性に反映されない
- そしてしばらくすると、他社も同じことができるようになる
- 技術の差は縮まり、また同じ物差しの上に戻る
ここで起きているのは、技術力が評価されていないということではありません。
評価されているのに、価格に変換されていないという不可解な現実です。
なぜ変換されないのでしょうか。
顧客が、他社と同じ物差しで御社を見ているからです。
- 相見積もりで3社が並ぶ
- 仕様書は同じ
- 納期の条件も同じ。
その状態では、技術力に違いがあっても、それが価格と取引条件を決める理由になっているとは限りません。
つまり、現在の状況では、技術力は受注の理由にはなっていても、価格と取引条件を決める理由にまではなっていないのです。
技術力を上げても、価格と取引条件の決まり方は変わらない
ここで多くの場合、技術力をさらに高める方向に向かいます。
- 新しい設備を入れる
- 公差をさらに詰める
- 加工できる材質を増やす
それ自体は間違いではありません。
しかし、上がった技術力もまた、受注の理由にとどまります。
難しい仕事が回ってくる範囲が広がっても、価格と取引条件の決まり方は変わらないからです。
技術力は、どんなに優れていても、事業を構成する要素の一つにすぎません。
一つだけを高めたとします。
他の要素との組み合わせが変わらなければ、顧客から見た御社の位置は変わりません。
だから、技術力だけではなく、事業全体を見ます。
事業を構成しているのは、次の6つの戦略変数です。
強み × 商品 × 提供方法 × 価格 × 顧客層&市場 × メッセージ発信
足し算ではなく、掛け算です。
一つひとつの変数に独自性が必要なのではありません。
6つの変数の内容をどう組み合わせるかによって、顧客から見た事業の違いが生まれます。
だから、技術力(強み)が突出していても、他の5つの内容の組み合わせ方が他社と変わらなければ、顧客はその6つ全体を見て「同じようなもの」と判断します。
ドラッカーは、強みをどう考えたか
ドラッカーは、成果は強みの上にしか築けないと繰り返し書いています。
弱みの克服だけでは、成果は生まれません。
ただし、ここには続きがあります。
強みが成果につながるかどうかは、顧客にとって価値があるかで決まるということです。
自社が強みだと考えているもの。
顧客が価値を認めているもの。
この二つは、しばしば一致しません。 技術者から見れば大変な精度だとします。
しかし、顧客の用途にとって過剰であれば、成果には結びつきません。
ドラッカーは、「われわれの事業は何か」を考えるうえで、「われわれの顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」を問いました。
強みを問うだけでは足りず、誰にとっての価値かを同時に問う必要があります。
技術力が価格に変換されないのは、技術力が低いからではありません。
その技術力を価値として認める顧客に販売していないか、販売していても、その価値が伝わる形になっていないからです。
同じ加工技術でも、コストを最優先する顧客にとっては、過剰品質になることがあります。
一方、歩留まりの改善が事業を左右する顧客にとっては、その技術が大きな価値になることがあります。
技術力は同じです。
変わったのは、誰に向けているかです。
「樽を売る会社」から、「酒の価値を高める会社」へ
たとえば、京都市の有明産業は、洋樽を製造する企業です。
同社は2000年代後半、洋樽事業で専業4社間の価格競争に陥っていました。
その後、自社の強みを見直します。
着目したのは、洋樽そのものではありませんでした。
樽によって酒の香りや味わいを変え、酒造メーカーの製品価値を高められることです。
樽の焼き加減を変えれば、酒に生まれる香りも変わります。 さらに、日本の木材を使った洋樽の開発にも成功しています。
ミズナラ、サクラ、クリ、杉。
従来は加工が難しかった木材です。
日本の木材を使った洋樽は、海外の酒造メーカーからもプレミアム洋樽として引き合いがあります。
ここで重要なのは、単に製樽技術をさらに高めたことではありません。
自社がつくっているものを、「樽」とだけ捉えていません。
その樽によって顧客の商品に何が生まれるのか。
そこを見直したことです。
藤屋式ニッチトップ戦略で見ると、別の捉え方ができます。
強みである製樽技術を、商品と顧客層&市場と組み合わせ直しました。
そして、顧客に生み出す価値を変えた事例と捉えられます。
もちろん、この事例から、有明産業が他社と比べられない市場地位を築いたとまでは言えません。
中小企業白書から確認できるのは、二つです。
製樽技術を生かし、酒造メーカーの商品価値を高める洋樽を開発したこと。
そして、日本の木材を使った洋樽が海外からも引き合いを得ていることです。
(出典:中小企業庁『2020年版中小企業白書』)
モノづくり企業の場合
では、御社は何から手をつけるのか。
順序に決まりはありません。
企業によって、6変数のどれに取り組むかが違うからです。
顧客層から見直すことが有効な会社もあります。
提供方法を変えるだけで、状況が大きく変わる会社もあります。
ただ、確認できることが一つあります。
今の顧客は、自社の技術力を価値として認めているか。
認められているなら、その価値を価格や取引条件に反映できる余地があります。
- 他社より高くても発注が来る
- 無理な納期の押し付けが減る
そうした反応が、価値を価格や取引条件に反映できる余地があることを示します。
ただし、価値が認められたからといって、自動的に価格が変わるわけではありません。
価格は戦略設計の6変数の一つとして、御社で設計し直す必要があります。
一方、そうした反応がまったくないとします。
その顧客にとって御社の技術力は、価値ではなく前提条件になっています。 あって当たり前で、なければ取引しない。
しかし、あるからといって高く買う理由にはならない。
この見極めが先です。
技術力を上げるかどうかは、その後の判断になります。
そして見極めた結果、今の顧客層のままでは技術力が価値にならない。
そう分かったとしても、すぐに顧客を入れ替えられるわけではありません。
現在の売上を支えているのは、現在の顧客だからです。
そこから先が、事業戦略の設計になります。
戦略設計の6変数の、何を、どの順序で変えていくのか。
技術力の違いを、価格と取引条件に反映させるために
技術力の高さを売上につなげるために必要なのは、技術力をさらに高めることだけではありません。
他社と同じ物差しで比べられない状態をつくることです。
他社と同じ物差しで比べられない状態になったとします。
相場ではなく、御社が提供する価値を基準に価格と取引条件を示す。
その余地が広がります。
この状態は、6変数のどれか一つを変えてつくれるものではありません。
強みを、どの商品として、どういう提供方法で、いくらで、誰に向けて、どう伝えるか。
この6つの組み合わせによって、他社と同じ物差しで比べる意味が薄れたときに成立します。
今、御社の技術力は、どの商品、どの提供方法で、誰に向けて組み合わされているでしょうか。
その組み合わせのままで、技術力の違いは価格と取引条件に表れるでしょうか。
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