選択基準をどう定めるか|戦略設計を進める次の一歩
ドラッカーをベースにしたニッチトップ戦略で、モノづくり企業の「価格と取引条件の主導権を取り戻す支援」をしている藤屋伸二です。
ここまで、このシリーズでは、価格の主導権を持てない理由から、設計とは選択であること、そして選択には基準が要ることを、書いてきました。
では、その選択基準は、何をもとに定めるのか。
- 何を維持するのか
- 何を減らすのか
- 何を強化し、何を捨て、何を創るのか
この判断が、案件ごとに変わっていないでしょうか。
選択基準は、一つの条件では決まらない
- 売上が大きいから残す
- 利益率が低いから捨てる
- 長年の顧客だから続ける
- 祖業からの技術力だから強化する。
どれも、判断材料にはなります。
しかし、一つだけを基準にすると、別のところで矛盾が起こります。
- 強みはあるのに、商品に反映されていない
- 商品はいいのに、対応する顧客層&市場が最適なものばかりではない
- 顧客から評価されているのに、価格に反映できていない
- 他社にない技術なのに、その違いが伝わっていない。
一つひとつの判断は、間違っていません。
それでも、それらを個別に改善しても、業績が飛躍的に改善することはありません。
なぜならば、問題は、一つひとつの良し悪しだけではないからです。
事業全体として、何を目指しているのか。
そこから逆算して、選択する必要があります。
戦略設計の6変数×戦略設計の5指針の整合から、逆算する
強み×商品×提供方法×価格×顧客層&市場×メッセージ発信。
戦略設計は、足し算ではなく、掛け算です。
ここでの1は、他社と同じレベル、という意味です。
劣っているのではありません。
その変数だけでは、自社を選ぶ理由になっていない状態です。
たとえば、各変数の能力レベルが下記のような状態だったとします。
2×1×1×1×1×1=2
技術に関わるところは2でも、提供方法や価格やメッセージ発信が他社と同じレベルのままなら、全体は2です。
ここで、努力してメッセージ発信を2レベルにする。
2×1×1×1×1×2=4
一つ動かしただけで、4倍になります。
さらに、価格を2レベルにする。
2×1×1×1×2×2=8
足し算なら、1を3にしても2しか増えません。
掛け算だから、全体が大きく動きます。
戦略設計の6変数のどこから手をつけるかは、会社によって違います。
数字を大きくすることが目的でもありません。
問うのは、6変数それぞれに「何を・どのように変える」と、顧客が自社を選ぶようになるのか。
つまり、全体として他社と比べられない状態になるかです。
他社と比べられないだけでは、足りない
ただし、他社と比べられなければ、それで戦略が成立するわけではありません。
- 他社にはできない仕事でも、必要とする顧客が少なければ、売上は伸びません
- 高い技術が必要でも、手間やコストがかかりすぎれば、利益は残りません
- 独自の商品でも、顧客がその違いに価値を感じなければ、適性価格では買ってもらえません
目指すのは、比べられないことそのものではありません。
他社が対応できない、あるいは対応したがらないニーズに、自社の強みを活かして応えることです。
その価値を認める顧客から選ばれ、適性価格と取引条件の主導権を持つような状態をつくることです。
そして、売上を伸ばしながら、利益率を上げる。
その状態になるように、6変数それぞれの内容を再設計します。
戦略再設計の5指針には、役割の違いがある
では、戦略設計の6変数それぞれの内容をどう変えるのか。
その判断に使うのが、維持する、減らす、強化する、捨てる、創る、の5指針です。
まず、これからも必要なものは維持します。
- 今後も応え続けたい顧客
- 適性価格で取引できている仕事
- 自社が選ばれる理由になっている強み。
維持することは、現状放置ではありません。
これから目指す事業にも必要だから、意図して残す判断です。
何を維持するかを決めずに減らし始めれば、必要なものまで削ってしまいます。
一方、何かを強化したり、新しく創ったりするには、ヒト、モノ、カネ、時間が要ります。
中小企業に、余っている経営資源はほとんどありません。
だから、減らす、捨てるによって経営資源を捻出します。
利益を生まず、自社の強みも活かせない仕事を減らす、あるいは捨てる。
そこで生まれた時間や人を、伸ばしたい顧客への対応や、新しい顧客の開拓に振り向ける。
減らす、捨てること自体が目的ではありません。
強化する、創るための経営資源を生み出すためです。
選択基準は、「目指す事業に近づくか」にする
では、何を維持し、何を減らし、何を強化し、何を捨て、何を創るのか。
- 売上だけでは決めません
- 利益率だけでも決めません
- 付き合いの長さだけでも決めません
判断するのは、その選択によって、目指す事業に近づくかどうかです。
- 6変数それぞれの内容は、目指す事業に合っているか
- 全体として、他社と比べられない状態をつくれるか
- その違いを、どのような顧客が価値として認めるか
- 適性価格と取引条件の主導権を持てるか
- 売上を伸ばしながら、利益率を上げられる事業につながるか
そこから逆算して、何を維持し、何を減らし、何を強化し、何を捨て、何を創るのかを決めます。
これらの選択基準は、「目指す事業に近づくかどうか」です。
■戦略設計の6変数の内容が変わらなければ、今の状態は続く
強み×商品×提供方法×価格×顧客層&市場×メッセージ発信。
この6変数そのものを変えるのではありません。
- どの強みを活かすのか
- 何を商品とするのか
- どう提供するのか
- どの適性価格にするのか
- どの顧客層&市場に応えるのか
- 何をどう伝えるのか
変えるのは、それぞれの変数の内容です。
今の内容によって他社と比べられ、価格と取引条件の主導権を持てていないのであれば、その内容が変わらないかぎり、今の状態も変わりません。
技術力を高めることについても同じです。
- 高めた技術を、どの商品に活かすのか
- どの顧客層&市場に応えるのか
- どの適性価格にするのか
- その違いをどう伝えるのか。
そこまでつながって初めて、技術力の向上が事業の成果につながります。
つまり、技術力を高めることが目的ではないのです。
高めた技術を、6変数全体の中でどう活かすか。
そこまでが戦略設計です。
選択基準も、見直し続ける
一度決めれば、同じ選択基準をいつまでも使えるわけではありません。
- 顧客のニーズは変わります
- 技術も変わります
- 対象市場も変わります
- 自社の強みも変わります
- 以前は維持すべきだった商品を、減らす判断が必要になることもあります
- 強化してきた顧客層&市場とは別に、新たな対象市場を創ることもあります
大事なのは、過去に決めたことを守り続けることではありません。
戦略設計の6変数それぞれに置いている内容が、これから目指す事業につながっているか。
そこを見ながら、維持し、減らし、強化し、捨て、創る。
事業運営は、その繰り返しです。
選択基準があれば、判断を迷わずに済む
経営では、毎日のように選択を迫られます。
- この仕事を受けるのか
- この顧客との取引を続けるのか
- この商品に人と時間をかけるのか
- この技術をさらに強化するのか
個別の事情だけで判断すれば、それぞれの判断は正しくても、事業全体では方向がばらばらになることがあります。
だから、選択基準が要ります。
何を維持し、何を減らし、何を強化し、何を捨て、何を創るのか。
一つひとつの選択を、目指す事業につなげる。
その判断を積み重ねながら、6変数それぞれの内容を整えていく。
選択基準は、戦略そのものではありません。
自社が目指す事業へ向かうための、判断の物差しです。
■次の一歩
ここから先は、戦略設計をどう進めるかで、二つの方法があります。
自社だけで、集中的に設計する
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他社と同じ場では出しにくい情報まで並べて検討したい。
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継続して、自社の判断を磨く
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