原価管理を「製造原価」で見ている限り、製造業の生産性は上がらない

中小企業に特化した「ニッチトップ戦略」を提唱している、藤屋伸二です。

私はこれまで、ドラッカーの考え方を実際の経営現場に落とし込み、「藤屋式ニッチトップ戦略」により、350社以上の中小企業の高収益化を支援してきました。
おかげさまで、ドラッカー関連の書籍も45冊執筆し、累計発行部数は225万部を超えています。

さて、多くの製造現場を見てきて痛感することがあります。
それは、せっかくの「原価管理」が、単なる過去の数字の集計(後片付け)で終わってしまっているという実態です。

しかし、本来の原価管理とは、過去を振り返るための事務作業ではありません。
次にどこへ投資し、何を切り捨てるかを決めるための、強力な「攻めの武器」であるべきです。

本記事では、350社の支援実績から導き出した「経営判断を爆速化させる仕組み」の作り方を解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは膨大な資料作成や「この仕事、受けて本当に利益が出るのか?」という迷いから解放され、本来取り組むべき「未来の利益を創るための戦略」に集中できるようになるはずです。

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■ 製造原価は合っていても、経営判断としては「不十分」な理由

製造業(モノづくり企業)の経営において、多くの会社が気づかないまま抱えている致命的な欠陥があります。

それは、原価管理を「工場の中だけの数字」で完結させてしまっていることです。

多くのモノづくり企業では、原価管理といえば、

  • 材料費
  • 直接人件費
  • 製造間接費(光熱費や減価償却費など)

これらを正確に把握することだと考えています。
少し意識の高い企業であれば、「固定費」と「変動費」を分け、「限界利益」で案件の採算を見ているかもしれません。

しかし、ここで一度、立ち止まる必要があります。
製造原価で見る管理も、限界利益で見る管理も、どちらも「モノづくり(生産工程)」という狭い枠の中から一歩も出ていないからです。

その結果、現場では下記の現象が起こります。

  • 製造原価では、たしかに黒字が出ている
  • 限界利益も、目標値をクリアしている
  • …それなのに、なぜか会社全体で見ると利益が薄い
  • そして、社長は朝から晩まで「判断」と「トラブル対応」に追われ続けている

これは決して偶然ではありません。
原価を測る「物差し」が、経営の実態とズレてしまっているのです。


■ ドラッカーの原価管理は、視点そのものが違う

では、なぜ製造原価をどれほど緻密に計算しても、この「黒字なのに苦しい」という矛盾を解くことができないのでしょうか。

その理由は、私たちが無意識に「原価とは、モノ(製品)にかかるお金のことだ」と思い込んでいるところにあります。

工場の外で発生している膨大な手間や、社長の貴重な判断時間。
これらが「原価」としてカウントされていないことこそが、経営を圧迫している真犯人です。

この経営の盲点を鋭く突き、原価の定義を根底から覆してくれたのが、ピーター・ドラッカーでした。
彼の提唱した原価管理(ABC会計:活動基準原価計算)の出発点は、既存の会計学とはまったく異なります。

ドラッカーは、経営の真実をこう考えました。

原価は、製品にかかっているのではない。
活動(Activity)にかかっている。

これは、経営における「コペルニクス的転換」です。
これまでの常識と、ドラッカーの視点を比較してみましょう。

  • 従来の製造原価: 「モノ」に原価が乗っていると考える(材料を加工したから高くなる)
  • 限界利益: 「モノ」がいくら稼ぐかを見る(売価から材料費を引いて残る額)
  • ドラッカーの視点: 会社が行っている「仕事・活動のすべて」が原価を生んでいると考える

つまり、原価を測る単位を「製品1個あたり」という狭い枠から、「その案件を回すために、会社がどれだけのエネルギー(活動)を消費したか」という、事業全体を俯瞰する視点へと切り替えるのです。

■「会社原価」で見ると、原価の正体が見えてくる

ドラッカーの「活動」という視点に立つと、これまでの計算には入っていなかった「原価に含まれるもの(利益を奪う真犯人)」が一気に姿を現します。

たとえば、一つの案件を完結させるために、以下のような活動にどれだけの時間を費やしているでしょうか。

  • 営業の時間(移動時間も含む)
  • 見積もり作成
  • 打ち合わせ
  • 設計変更への対応
  • 社内調整
  • クレーム処理
  • 社長の判断時間

これらはすべて、帳簿には載らない「会社の原価」です。

工場の製造原価(モノの原価)では黒字に見えていても、

  • やたらと手間がかかる
  • 社長の判断(脳のリソース)を奪い続ける
  • 社員と社長が疲弊する

そんな仕事は、「会社原価」で見れば紛れもない赤字です。

「頑張れば頑張るほど、会社から活力が失われていく」と感じるなら、その原因はまさにこの「見えない原価」の垂れ流しにあるのです。

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■ 販売業は、なぜ「割に合わない商売」を切れるのか

この話は、小売業や卸売業などの販売業と比較すると、一気に分かりやすくなります。

販売業の原価は、確かに仕入原価が出発点です。
しかし実際には、仕入原価だけを見て経営判断をしているわけではありません。

人件費、家賃、物流費、販売促進費など、商売を回すために必要なコスト全体を前提にして、「この商売は会社として割に合っているか」を判断しています。

だから販売業では、

  • 回転率が悪い
  • 人が張り付きすぎる
  • 管理コストがかかりすぎる

こうした商品や取引は、仕入原価が安くても、自然と見直しの対象になります。

■ モノづくり企業が陥りやすい罠

一方、モノづくり企業の現場では、販売業のようなシビアな判断が鈍ってしまうことが少なくありません。
そこには、製造業特有の「稼働の罠」があるからです。

  • 製造原価の計算上は、利益が出ている
  • とにかく工場(機械)が動いているから安心だ

こうした理由だけで、会社全体で見れば明らかに「割に合わない仕事」をズルズルと続けてしまうケースが非常に多いのです。

しかし、冷静に考えてみてください。

工場の数字で黒字であっても、会社全体のエネルギー(会社原価)を垂れ流して赤字を垂れ流しているなら、それは「頑張れば頑張るほど、会社を内側から弱くしていく仕事」に他なりません。

「機械を止める恐怖」よりも、「利益を生まない仕事に、社長や社員の貴重な時間をロックされる恐怖」の方が、経営にとっては遥かに致命的なのです。

■ 原価管理の本質は、「やめる仕事」を決めること

原価管理の本当の目的は、1円単位で原価を正確に計算することではありません。

その真の役割は、「どの仕事をやめるべきか」を、感情抜きで決めるための「基準」を持つことにあります。

どれほど長く続いている仕事でも、どれほど思い入れのある製品でも、会社の活力を奪い、未来への投資を邪魔しているのなら、それは手放さなければなりません。
ドラッカーが説いた「計画的廃棄(廃棄せよ)」という言葉は、まさにこの冷徹かつ前向きな決断を指しています。

原価管理とは、社長を「計算係」にするための道具ではありません。
社長を、本来の役割である「判断の仕事」に戻すための仕組みなのです。

「なんとなく忙しいから」と根性で乗り切る経営を卒業し、数字という客観的な根拠に基づいて、次の成長のために「捨てる」ハンドルを切る。
それこそが高収益企業へと変貌を遂げるための絶対条件です。

下記の記事では、 中小企業がどれほど努力しても利益が上がらない根本的な理由は、商品力不足ではなく「市場の選択(戦う場所)」の間違いにあることを、ドラッカー流の視点から解説しています。
「忙しく働いているのに、思うように利益率が上がらない」と課題を感じている方は、 この記事を読むことで、今の市場に留まるリスクを理解し、圧倒的な利益率を確保するための「正しい土俵の選び方」がわかります。図が手に入ります。

製造業の利益率を劇的に変える「戦略の型」とは?

~ 必死に働いても手元にお金が残らない本当の理由 ~ 中小企業に特化した「ニッチトップ戦略」を提唱している、藤屋伸二です。 私はこれまで、ドラッカーのマネジメント…

■ 原価の見方が変わると、経営の重さが変わる

製造原価という「モノの数字」だけで経営を見ている限り、次のような負のループから抜け出すことはできません。

  • いつまでも仕事が減らない
  • 忙しさから抜け出せない
  • 利益は常に薄いままである

しかし、視点を「会社原価・事業原価」へと切り替えた瞬間、経営の景色は一変します。

  • やるべき仕事が絞り込まれ、ムダが消える
  • 「やめる」判断が劇的に速くなる
  • 手元に利益が確実に残る

同じ会社、同じ社員、同じ設備であっても、原価の見方が変わるだけで、経営状態は全くの別物になるのです。

■ 「価格競争」を卒業し、高収益な製造業へ転換したいあなたへ

今回の記事でお伝えした「原価の見直し」と「廃棄(やめる決断)」は、高収益化への第一歩に過ぎません。

不採算な仕事を捨てて空いたリソース(時間・人手)を、「いかに他社が真似できない自社の真の強み(他社よりも優れた魅力)に注ぎ込むか」
ここで経営の勝敗が決まります。

  • 製品には自信があるが、他社との違いをうまく伝えられない
  • 良いものを作っているのに、最後はいつも価格交渉で負けてしまう
  • 自社の本当の強みを、どうやって「利益」に変えればいいか分からない

藤屋式ニッチトップ戦略では、そんな悩みを抱える製造業の社長様のために、ドラッカーの「強みの再定義」を使い、製造業が着実に利益率を上げていくための「3段階の成長ステップ」を体系化しています。

ステップテーマ得られる成果
【Step 1】差別化の確立自社の「真の強み」に気づき、選ばれる理由を作る
【Step 2】粗利益率5%アップ製造・営業を仕組み化し、利益が漏れない体質を作る
【Step 3】ニッチトップ戦略非競争・弱競争の市場へシフトし、増収増益を定着させる

まずは「ステップ1」から、大きな一歩を踏み出しませんか?

「技術には自信があるが、価格に反映できていない」とお悩みなら、まずはステップ1:差別化から始めてください。

特別な新設備の導入は不要です。
今ある製品や提供方法の「アピールの仕方」を変えるだけで、顧客から感謝されながら、正当な対価(利益)を受け取れるようになります。

《ビジネス教材》中小製造業の差別化|シンプルなのに確実 ステップ1
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