ドラッカー流「顧客の創造」の実践法【専門家がわかりやすく解説】

~ マーケティング&イノベーションを活用した顧客創出の実践ガイド ~

中小企業に特化した「ニッチトップ戦略」の専門家、藤屋伸二です。

ピーター・ドラッカーは、「企業の目的は、顧客を創造することである」と述べています。
また、「企業において成果を生むものは、マーケティングとイノベーションだけである。他のすべてはコストである」とも述べています。

私はこれまで、このドラッカーの考え方を実際の経営現場に落とし込み、 「藤屋式ニッチトップ戦略」と組み合わせることで、350社以上の中小企業の高収益化を支援してきました。
また、ドラッカー関連の書籍を45冊執筆し、累計発行部数は225.9万部を超えています。

その経験から確信しているのは、 “顧客創造”というドラッカーの原理を、現場でどう実践するかこそが、経営の核心であるということです。

本記事では、ドラッカーの言葉を出発点に、中小モノづくり企業が「マーケティング」と「イノベーション」を実践的に活用して新しい顧客を創造するための最適な方法を紹介します。

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1. ドラッカーが言う「企業の目的」とは?

まず最初のステップは、「企業の目的」を正しく定義し直すことです。

なぜなら、ここを誤るとすべての経営判断がずれていくからです。

ドラッカーの視点から見ると

ピーター・ドラッカーは「企業の目的は顧客を創造することである」と明言しています。

また、彼は「企業において成果を生む2つの基本機能は、マーケティングとイノベーションである。他のすべてはコストである」とも言いました。

つまり、「利益追求が目的ではなく、顧客創造が目的」という視点が出発点です。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

この視点を中小モノづくり企業に適用するなら、「まず何のための企業か」を自社内で問い直す場を持つことが大切です。

すると、後工程で「顧客をどう創るか」という議論が意味を持ちます。

さらに、マーケティング・イノベーションを単なる部門活動ではなく「企業の根幹機能」として位置づけて、組織構造・資源配分を再設計すべきです。

実際のケースでは

ある中小金属加工企業が、「自動車部品を作る」のではなく「部品を通じて顧客の生産性を上げる」という企業の目的を掲げ直し、営業・設計・生産の役割を見直した結果、新規顧客層(非自動車分野)を開拓できたというケースです。

この「顧客創造」を正しく実践するには、まず自社の“事業の定義”を明確にすることが出発点です。
「誰に・何を・どのように提供するか」を定めることで、顧客創造の方向性がぶれなくなります。
下記の記事では、その考え方や方法について解説しています。

ドラッカーが説く”事業の定義”とは? 【専門家がわかりやすく解説】

私はこれまで、このドラッカーの考え方を実際の経営現場に落とし込み、 「藤屋式ニッチトップ戦略」と組み合わせることで、350社以上の中小企業の高収益化を支援してきま…

2. ドラッカーが言う「マーケティング」とは?

企業の目的を再定義した次のステップは、マーケティングの考え方を再構築することです。

ドラッカーの視点から見ると

ドラッカーによれば、マーケティングとは「顧客を知り、理解して、商品やサービスがその顧客にぴったり合うものとなるようにする」ことです。

彼は「マーケティングは売るための活動ではなく、売れる仕組みをつくるための活動」だとし、「マーケティングが完璧なら、販売(セールス)は不要になる」とまで述べています。

また、マーケティングとセールスを明確に区別しています。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

中小モノづくり企業においては、「設計・生産の発想 ⇒ マーケティング・顧客発想」の順序が逆転していることが多いという盲点があります。

まず「顧客が求めているものを知る」ことを起点に、商品開発・生産・販売までを逆算で設計すべきです。

マーケティングを単なる「販促・チラシ・展示会」から、顧客価値創造の起点とすることをおすすめします。

実際のケースでは

例えば、顧客=大手メーカーではなく、顧客=「省エネニーズを持つ中小企業設備保有者」であると仮定し、その顧客像に合わせた切削工具の新提案を行った結果、新しい顧客群を得た、という展開です。

3. ドラッカーの言う「イノベーション」とは?

マーケティングで顧客を理解した次のステップは、その理解をもとに「新しい価値を創る=イノベーション」を起こすことです。

ドラッカーの視点から見ると

ドラッカーは、イノベーションを「新たな顧客を生み出すための活動」と位置づけています。

「マーケティングとイノベーションは相互依存関係にあり、顧客創造という目的実現には両方が必要である」との論点も多く指摘されています。

イノベーション=単なる技術改良ではなく、「市場・顧客の視点からの新しい価値創造」なのです。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

中小モノづくり企業では、技術改善だけに偏りがちですが、そこに「新しい顧客のあり方」「新しい使われ方」「異業種からの参入用途」を掛け合わせることで、イノベーションを顧客創造に直結させることができます。

また、マーケティング部門と技術・開発部門を「顧客創造チーム」として一体化させ、「顧客発見→価値設計→商品投入」の一連の流れをスムーズにする組織運営が有効です。

実際のケースでは

金型加工企業が、従来の自動車産業向け金型から「医療機器向け金型」という、まったく異なる用途にチャレンジ。

顧客ニーズをゼロから洗い直し、小ロット対応とアフターサービスを付加価値にして、新規市場を創出したという展開です。

4. 「マーケティング&イノベーション」の前提になるもの

マーケティングとイノベーションを実行に移す前に、まず“土台”を整える必要があります。

ドラッカーの視点から見ると

マーケティングとイノベーションを機能させるためには、前提として以下のような視点・組織文化・プロセスが整っている必要があります。

  1. 顧客視点/市場感覚の組織風土
  2. データ・インサイトに基づいた意思決定
  3. 失敗を許容する実験的姿勢
  4. 市場細分化とポジショニングの明確化(次項で詳述)

これらが抜けていると、「技術重視」「作ってから売る」構図に陥り、顧客創造に繋がりません。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

中小企業では特に「前提整備」の見落としが多いです。

まず以下のステップを推奨します。

  1. 社内で「顧客創造=企業の目的である」という共通認識を持つためのワークショップ開催
  2. 市場・顧客データを収集
  3. 共有する仕組みづくり(簡易的で可)
  4. マーケティング×技術部門の定例クロスファンクション会議を新設
  5. 小さくても「仮説→試作→テスト投入→学び」のサイクルを回す実験をする社風を醸成

実際のケースでは

例えば、従業員全員に対して「顧客とは誰か?我々は何を提供できるか?」という問いを投げる「意識改革研修」を実施し、全社共有の顧客像をつくり、それをもとに社内プロジェクトを立ち上げるというケースです。

5. 市場の細分化

次のステップは、「誰に価値を提供するのか」を明確にすることです。

市場を細かく分けることで、顧客創造の方向性が見えてきます。

■ ドラッカーの視点から見ると

市場を「漠然と大きく捉える」状態では、顧客創造の施策は打ちにくくなります。

マーケティング理論でも「セグメンテーション(市場細分化)」は基本中の基本です。

ドラッカーも「顧客を知ること」がマーケティングの出発点としています。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

中小モノづくり企業では「〇〇業界向け」など曖昧な定義になりがちです。

以下の視点で市場を細分化すべきです。

  • 顧客の業界、用途、規模、課題
  • 地域、時間、流通チャネル
  • 顧客が実現したい変化、価値観

この細分化によって「我々が創るべき顧客はどんな顧客か」が明確になります。

実際のケースでは

たとえば「自動車部品大手」から、「地方中堅農機メーカー」「食品包装向け省エネ設備ユーザー」といった細分化により、自社技術が“どこでどんな価値を出せるか”を明確化。

その結果、後者の市場に絞って営業・マーケティングを展開し、新規顧客を創出した例です。

6. 市場でのポジショニング

市場を絞り込んだ次のステップは、「自社の立ち位置=ポジション」を明確にすることです。

ドラッカーの視点から見ると

市場で細分化した後、「どの位置(ポジション)で勝負するか=ポジショニング」が重要です。

ドラッカーのマーケティング観からも、「顧客の立場から見た価値提供」=ポジショニングが成果創出の鍵となります。

ポジショニングが曖昧だと、顧客創造の際に「差別化できない」「選ばれない」状況に陥ります。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

中小企業では「我々は〇〇が強い」と語りがちですが、顧客にとって“選ぶ理由”になっているかを検証すべきです。

以下の視点でワークを実施しましょう。

  1. 顧客が代替手段として使っているものは何か?
  2. 我々が提供できるユニークな価値は何か?
  3. その価値を顧客が理解・受容できる言葉で表現しているか?

この答えを基に“顧客創造のポジショニング戦略”を策定します。

実際のケースでは

加工企業が「高精度」を強みにしていたが、競合他社も似た訴求をしていたため差別化が弱かった。

そこで「24時間以内で試作付き」「夜間緊急対応」「設計支援付き加工」でポジションを「即応×設計支援付き加工」の領域に再定義し、これを訴求して新規顧客を獲得した、というケースがあります。

7. 顧客創造の事例:中小モノづくり企業バージョン

ここまでの要素を組み合わせ、最後に「顧客創造の流れ」を実行に移します。

◆ドラッカーの視点から見ると

顧客創造=単に既存顧客を維持・増やすことではなく、「顧客創造=新しい顧客を創り、市場を拡張すること」です。

ドラッカーの概念では、この「創造」が企業の目的そのものです。

中小モノづくり企業では「受注頼み」「既存顧客依存」の構造になりがちで、顧客創造視点が抜けていることが多いです。

中小モノづくり企業が取り入れるなら

顧客創造とは、既存市場での競争ではなく、新しい市場を創り出すことです。

ドラッカーの原則に沿ってステップを踏めば、“顧客を創る経営”に転換できます。

  1. 自社技術・資源を細分化し、「どのような課題を・どう解決できるか」を検討
  2. それを実現できる商品や提供方法に再設計する
  3. その特徴を強く求める“顧客像”を明文化・小規模テスト投入(プロトタイプ/パイロット)を実施し、成功事例をつくる
  4. 成功事例を基に本格的にメッセージ発信を行う

この流れを繰り返すことで、あなたの会社にも“顧客が自然に集まる仕組み”が生まれます。

実際のケースでは

ある中小金属加工会社が、従来「自動車部品会社向け」に特化していたが、細分化を行い「地方中堅食品機械を持つメーカー」が「汎用加工でありがちな機械停止時間」を課題にしていると仮定。

  1. 技術見直しにより「加工準備を半減するフレキシブル冶具」+「遠隔モニタリング対応」サービスを加えた
  2. ポジショニングを「止まらない加工体制を支援する加工パートナー」に再定義
  3. これにより新規顧客獲得に至った

このように、顧客創造の流れを実践可能な構造に落とし込みます。

8. 顧客創造を実践する経営塾のご紹介

「自社でも顧客創造を実践したい」と感じておられる経営者の方に向けて、より体系的に学び、実践できる機会をご用意しています。

◆ 書籍で理論を深めたい方へ

拙著『ドラッカーに学ぶ 中小モノづくり企業のためのニッチトップ戦略』では、本記事で解説した内容をより深く掘り下げ、中小モノづくり企業がドラッカーの理論を通じて「根に眠っている強み」を覚醒させ、粗利益率の向上とともに新たな顧客層を開拓するための具体的な方法を解説しています。

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◆ 実践で成果を出したい方へ

また、顧客創造を実践するための経営塾として、【藤屋式ニッチトップ戦略塾|グループコンサル コース】をご用意しています。
この塾では、ドラッカーの「顧客創造」の考え方を基盤に、マーケティングとイノベーションを統合した実践型プログラムを提供しています。

理論を学ぶだけでなく、実際に自社の強みを再発見し、「自社らしい価値」で新しい顧客を創り出す。

そんな高収益型ビジネスへの変革を目指す経営者に最適な内容です。

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■ まとめ

ドラッカーが説いた「企業の目的は、顧客を創造することである」という言葉は、今もなお、中小企業経営における普遍の原理です。

そして、顧客を創造する力は、企業の中にすでに眠っています。
それは「技術」でも「製品」でもなく、“自社がどんな顧客に、どんな価値を提供できるのか”という根の部分にある強みです。

その強みをドラッカーの理論で覚醒させ、粗利益率を高めながら新しい顧客を創り出す。
その第一歩として、ぜひ書籍や経営塾を活用し、“顧客創造経営”の実践を始めてください。

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