独自能力型ニッチ戦略

ニッチ戦略群のトップバッター

前回、中小企業を継続的に儲かるビジネス・モデルをつくる方法として、4つの戦略群があることを紹介しました。その中の「ニッチ戦略群」に属する10個のニッチ戦略を1つ1つ確認していきましょう。

中小企業を高収益にするニッチ戦略群の中でも、最もニッチ戦略らしいニッチ戦略が、この独自能力型ニッチ戦略です。

独自能力とは卓越した技術やノウハウ

業績を決めるのは「商品力×販売力」です。このどちらかが、他社にないものか、競合他社より優れたものでなければ利益は出ません。

その優れているものが「独自能力」(他社より秀でた能力、自社の強み)です。その独自能力を活かして独自化を計るのが「独自能力型ニッチ戦略」です。

ただし、その独自能力は、大企業と競争できるものである必要はありません。ほとんどの場合、中小企業がどんなに努力しても大企業には勝てません。だから、大企業が努力してまで参入する気が起こらない市場を狙って展開することです。たとえば、岡野工業の痛くない注射針。大企業のテルモとのコラボで開発しました。痛くない注射針はテルモのアイデアでしたが、他社で断られ続けて、ようやく辿り着いたのが岡野工業でした。

普通の注射針の直径は0.4mm。同社のものは0.2mm。これだと蚊に刺されたのと同じで、痛みを感じないというわけです。

さて、ペン型注射針の世界の市場規模は350億円です。たぶん、大企業が本気で開発すれば同サイズの注射針は開発できないことはないでしょう。しかし、たとえ開発できても開発費と市場規模(パフォーマンス)の関係で魅力がないと判断するでしょう。

また、中小企業がマネするには、技術力が足りないのです。あるいは、周辺まで特許で抑えられており、新たな技術を開発するには、時間・コストが掛かり過ぎて経営を圧迫してしまうので、参入できない可能性が高いとも言えます。

販売業にも独自能力はある

独自能力型ニッチは、製造業に限ったものではありません。販売業でも適用できます。

例えば、長崎県佐世保市の小さな家電販売店から、1,600億円企業になったジャパネットたかたの成長要因が、この独自能力でした。

同社は、高田明さん(株式会社ジャパネットタカタの創業者)の販売力で大きくなったと言っても過言ではありません。彼のセールストークが「独自能力」だったのです。

同社が取り扱っているものは、家電、寝具・家具、生活雑貨など、どこにでも売っている平凡な商品群です。

圧倒的に多くの同業他社は、家電、寝具・家具、生活雑貨の機能や品質、つまり、「商品そのもの」を売っていました。

しかし、高田明さんが販売していたものは、それらの商品から得られる便利さ、豊かさ、家族の幸せでした。

「顧客は、その商品を買って得られる満足を買っている」とドラッカーは言っています。高田さんは、まさにその「満足」を売っていたのです。

家族の幸せを求めない主婦はいません。その幸せになる手段(商品)を、絶妙なトークで売っていたから、低迷する同業他社を尻目に、順調に成長できたのです。

なお、同社の事例は、後日、説明する「商品の意味や価値を変える変更戦略群」の「本当の価値を売る戦略」にも当てはまります。