マネジメント(経営)とは何か

ある大学教授からのメール

ある時、私が必要なときに教えを請うている東洋大学の井上善海教授から「ドラッカーは、“マネジメント”という言葉を明確に定義しているのでしょうか。定義があれば教えてください。調べてもなかなか出て来ないので、定義しないで使っていたのかなと、ふと思いました」というメールが入った。

このメールに対して、「経営管理では、管理者の仕事のように部分的なニュアンスがありますので、定義とは言えませんが、“マネジメント”は“経営”と訳しています。そうすれば計画・実行・評価がマネジメント・サイクルと素直に言えます。ただし、計画には理念・方針・戦略・中期経営計画などの上位概念も含んでいます」と返信した。

すると、「確かにそれは定義ではありません。ドラッカーが『新しい現実』でマネジメントの役割としている“共通の目標、共通の価値観、適切な組織、訓練と研鑽によって、人が共同で成果をあげるようにすること”を定義としていたが、間違いですか」という趣旨のメールが再度、届いた。

そして、追伸に「藤屋先生の定義を聞かせてほしい」とありました。

マネジメントを定義する

そこで、『P・F・ドラッカー経営論』(注:論文集)を本棚から引っ張り出し、該当箇所を読んでみた。

そうすると、マネジメントの構成要素として、(1)人間に関わること、(2)風土に関わること、(3)目的に関わること、(4)教育に関わること、(5)責任に関わること、(6)成果に関わること、⑦顧客満足に関わること、とあった。(一部修正)

そこで、井上教授からのメールにあった「マネジメントの役割」についてのドラッカーの定義に少し加筆し、「マネジメントとは、共通の目標、共通の価値観、適切な組織、一人ひとりの責任とコミュニケーション、訓練と研鑽によって、人が共同で顧客満足を通して成果をあげるようにすること、にしました」、と返信した。
ただし、よくよく考えてみると、これではドラッカーが『現代の経営』で述べた(1)事業のマネジメント、(2)組織のマネジメント、(3)人と仕事のマネジメント、の3つのマネジメントのうち、(1)事業のマネジメントがうまく表現されていない。それから当分の間、マネジメントの定義が頭から離れなかった。

それから、しばらくの期間、考えて、「マネジメント(経営)とは、自社の強みを活かして社会貢献し、その見返りとして利益を獲得するために、共通の目標、共通の価値観、適切な組織、一人ひとりの責任とコミュニケーション、訓練と研鑽によって、組織のメンバーが共同で顧客満足を通して成果をあげるようにすること」にした。多少、長い気もするが、これだとドラッカーのマネジメントを言い表せているように思う。

なお、組織のメンバーとは、社内の人間だけでなく、連携する会社や人々も含むものとする。

わかったつもりを根絶する

私は、主宰する【ドラコン藤屋のニッチ戦略塾】などで、いつも塾生の皆さんに、考えてもいなかったような基本的(あまりに当たり前)な質問をしている。そうすることで、経営の基本に立ち返ることができ、思い込みを払拭して低迷していた業績からV字回復することもかのうになるからだ。

基本的なことを問うその重要性を、今回の件で重要性を再認識した。また、そうした種類の質問を、自分自身に投げかける重要性も痛感した。

そうしないと、基本をおろそかにしたままの視点からものごとを見、分析し、判断することになるからだ。その結果、変わってしまった環境に気づかないような事態に陥ってしまうリスクが出てくる。

井上教授からのメールは、「基本の重要さ」を強く再認識させて頂くものだった。