000 はじめに

ドラッカーの名言

本書『現代の経営』は、1954年、ドラッカー44歳のときの著作である。
世界で最初の総合的経営書であり、かつ今日でも広く読まれている経営の理論書である。

ドラッカー名著集『現代の経営(上)』より

解説

貴方は、群盲象を評す(盲人が象に触れた話)をご存知でしょうか?

ある人は足に触れて「柱」だと思い、
ある人は尾に触れて「綱」だと思い、
ある人は鼻に触れて「樹の枝」と思い、
ある人は耳に触れて「扇」だと思い、
ある人は胴に触れて「壁」だと思い、
ある人は牙に触れて「パイプ」だと思いました。

それぞれの人の感じたことに嘘はありません。
しかし、いずれの人も部分的に正しいのであって、象の全体像はまったくイメージできていません。

実は、多くの経営書がこの「群盲象を評す」のような状況なのです。経営理念、経営計画、マーケティング、イノベーション、管理者、リーダーシップ、モチベーションなど、それぞれの分野における優れた経営理論はたくさんあります。
しかし、それらは経営の一部にすぎません。

人間の体を事例にすると分かりやすいのですが、人間の体は全体として一つです。
複数の人から最強の臓器や部位を集めても、ロボットみたいに一人の人間として機能するわけではありません。

会社の経営も人間の体と同じで、全体で一つであり、良い理論を寄せ集めたからといって良い経営ができるわけではありません。
理論には、それぞれに思想や価値観といった背景がありますので、部分最適化ではあっても全体最適ではないのです。

数多い理論のなかで、ドラッカーだけが、「総合的」かつ「ハイレベル」の経営理論なのです。

ドラッカーの特徴は、バランス感覚です。
「顧客の利益」と「社員の利益」と「会社の利益」のバランス、
「現在の利益」と「将来の利益」のバランス、
また、「事業のマネジメント」「組織のマネジメント」「人と仕事のマネジメント」
という会社経営に必要なことをすべて網羅しています。

中小企業での活用法

私は、信頼関係ができた経営者には「まず、ドラッカーだけ学びなさい」と言っています。ドラッカーを完全にマスターすれば、肉付けとして他の経営書の内容が生きてきます。

しかし、経営理論が確立できていない段階で、さまざまな理論を学ぼうとすると、どれも中途半端な状態になり、結局、自分の経験を核にすることになります。

それでは、客観的に世の中の動きや顧客の心を知ることは難しくなります。
正しくは、経営理論を自分の経験で肉付けしていくのです。

この『中小企業のためのドラッカー名言集』は、ドラッカーのマネジメント論の中から、中小企業に必要な部分を選び出して、わかりやすく解説していきます。

もちろん、経営理論の80%程度は、すべての規模に共通していますので、大企業にも、個人事業主にも使えます。しかし、あくまでも読者対象は中小企業の経営者を想定していますので、事例の多くは中小企業となります。

この『中小企業のためのドラッカー名言集』は、まず、ドラッカーの基本書となる『現代の経営』からスタートします。ドラッカーを好きな人にも、業績アップが好きな人にも楽しみながら学んで頂けると思います。ご期待ください。